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かつお菜 博多かつお菜 勝男菜
アブラナ科の野菜で、カラシナの仲間。
九州北部で以前から栽培されていて、「博多かつお菜」の名で流通します。
博多のお雑煮には欠かせない素材。
アミノ酸豊富で、かつお節の風味が感じられること、または、かつお節でダシをとらなくても美味しい ということから、この名で呼ばれます。
なお、山形県酒田市にも「かつお菜」がありますが、ナバナ系で別の物です。
農研機構 農業生物資源ジーンバンク を参照ください。
https://www.gene.affrc.go.jp/databases-traditional_varieties_detail.php?id=06024
【 来歴 】
江戸時代なかごろから栽培されているようですが、伝来元は不明です。
福岡市箱崎の木村半次郎氏が選抜育成した、「博多改良広茎かつおな」が、栽培の中心になっています。
生前、木村氏が談話で残したと思われる逸話が残っていますのでご紹介。
九州大学学術情報リポジトリ 「怡土・志摩の村を歩く」
第5章 九州大学のキャンパス移転と町・村の変化 23頁目
https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1655044/p190-214.pdf
楠瀬慶太氏らの聞き取りによれば、地元では「まぎょう菜(不明)」と呼ばれているものを改良して、カツオ菜をつくったとあります。
昭和5年ごろのこと。
しゃくし菜も盛んに作られていたようで、大陸伝来のアブラナ野菜の類は既に多く作られたようです。
福岡では年始の地域独特の食習慣もあって、正月需要がピークなので、晩夏播種の作型が中心となります。
春まきも栽培できます。
意外に栽培しやすく、生育も旺盛。
防除に気をつければ、次々収穫できて、長く楽しめます。
実際に春蒔きで栽培しましたので後述。
【 たべかた 】
よく博多の正月の、お雑煮に欠かせないものと紹介されます。
忙しい商人の家庭では、かつお菜を串刺しして、具材としてすぐ出せるようにしたとか。
どうやら、これがないと博多っ子の雑煮は完成しないようです。
アクが少なく、クセの少ない、うまみの多い優れた葉野菜です。
和え物、煮物のほか、広く葉野菜として和洋問わず使える印象です。
歯ごたえが良いことも、この野菜の優れた点のひとつです。
旨みが強く、嫌なクセはありません。
加熱してもしっかり感が残ります。
煮物にも良さそうです。
和洋中、あらゆる味付けに合うと思います。
食べた印象では、葉柄の、やや堅い部分が、シャッキリ感があって、なかなか美味しいです。
茹でると、葉自体の歯ごたえが残って、崩れることがありません。
茎部分は、とても食感の良い野菜ですので、活かしてほしいポイント。
生でも食べられるようですが、葉柄にわずかなトゲがあって、気になるかもしれません。
塩漬けにしてみましたが、少しクセの残る味わいです。
和食だけなんて、もったいない。
そう思いました。後述。
【 実際に栽培してみた 】
種はネット通販で容易に入手可能です。
「広茎かつお菜」「博多かつを菜」「かつお菜」などの名で出ています。
高菜の仲間は、白菜などの普通のアブラナ科野菜とは交雑しないものの、高菜や、からし菜とは交雑するそうです(野口のタネさん情報)。種取りしたい方は注意して下さい。
春まき、秋まき両方可能ですが、秋まきの方が美味しくなるようです。
秋まきは、播種に失敗したので、春まきで栽培してみました。
使ったのは、日光種苗さんの種。
セルトレーで発芽。
発芽率は高いようです。
かわいいですね。
一週間後移植。
小さいので心配しましたが、心配ご無用。
むくむくと、だんだん大きく育って、特に気を遣うことはありませんでした。
約3週間後。
葉は20cm程度にまで成長。
その後、虫たちに穴だらけにされます・・・・
気にしなければ自家消費分くらいは順次収穫できます。
JA粕屋 北筑普及指導センターの資料によれば、以下の施肥および農薬を使用しています。
虫食いが多く発生することから、商業作物とする場合は、対策が必要です。
参考にして下さい。
施肥 10aあたり
園芸化成250 100kg(元肥)
NK化成2号 60kg(追肥)×2回
尿素46-0-0 30kg(追肥)
防除
播種時 ダイアジノン粒剤 6kg/10a
発生時 アファーム乳剤 1000-2000倍
発生時 モスピラン粒剤水溶剤 4000倍
白さび病対策として
アミスター20フロアブル 2000倍
ランマンフロアブル 2000倍
ライメイフロアブル 2000-4000倍
詳しくは、現在ある指定登録農薬の詳細を参照ください 202405時点
【 自家採種してみる 】
そのまま放置しておくと、スクスクと伸びます。
背丈に近いくらいになると、黄色い花を咲かせ始めます。
まるで、「菜種」のようです。
そのまま放置しておくと、菜種同様、サヤをつけ始めますので、さらに熟成。
ある程度のところで、伐採~乾燥。
十分乾燥しきった所で、種を取り出します。
とても小さな種。
サヤをひとつづつ裂いていたのでは、いつまで経ってもおわりません(笑)。
実は、最初そうしていたのです。
すごく時間がかかる・・・。
両手でサヤを挟んで、モミモミすると、バラバラと種が分けられ、早く種を取り出せます。
ゴミを取り除いて、空き缶などの容器に収納。
【 じっさいに食べてみる 】
順調に育ってきたので、食べてみます。
当初は無農薬状態。
葉の大きさが25cm以上になったものを収穫してみます。
高菜のような大きさにはなりませんが、それでも大きな葉が次々と収穫できて、なかなか楽しめます。
収穫は、葉を根元から手でポキッと折るだけ。
家庭菜園でも出来そうですが、プランターでは全滅しました。
根の張りが良く、小さなプランターでは合わない印象です。
軽く洗って、筋っぽい茎の部分を切り分けます。
大きな葉でなければ、一度に茹でてもよさそうです。
沸騰した湯に、まずは茎から茹でます。1~1分半。
その後、全部を1分ほど茹で。
軽く絞って、下準備完了。
アクは少ない印象です。
食べる大きさに切り分けておきましょう。
今回はゴマ和え。
同じ手順で、厚揚げと煮物にも してみました。
これまた、食感が残って、旨味たっぷりの一品になりました。
感じた点
茎の部分が、とても良い食感。
サックサク(笑)。
葉っぱは特にクセは無く、旨味も強い野菜です。
さらに煮込んだ揚げさんとの煮物では、しっかりと形が崩れることがない印象。
けっこう煮込んでも、良さそうです。
おでんに入れるとか、お鍋にも良さそうな食材。
白菜よりも、しっかりした存在感が感じられそうです。
葉が大きいので、同僚は 包んで食べてみると言っていました。
なるほど、ご飯をおむすび海苔の代わりに包んで、塩とゴマ油で焼いても旨そう。
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