初姫　　はつひめ　　初姫蚕豆

科:マメ科 Fabaceae
属:ソラマメ属 Vicia
種:ソラマメ V. faba

ヴィルモランみかど株式会社の前身、協和種苗株式会社の育成した、ソラマメ。
種皮の色が赤褐色になる、ソラマメです。
「於多福」の突然変異と紹介されています。

福井県の一部に、「越前赤そら豆」という、種皮の色が赤褐色になるものが栽培されているようです。小ぶりな実で、「初姫」とは別物です。「越前赤そら豆」の種は、福種、野口のタネ等で入手できます。

「初姫」「はつひめ」の名で、エンドウ豆と和梨、柑橘の登録がありますが、本種と特段の関連は無いようです。
戦国武将　浅井長政の三姉妹から名付けられているのでしょうか。

【　ソラマメの概略　】

原産地は、諸説ありますが、中近東と考えられています。
巻きひげの無いタイプで、紀元前から食べられてきた、歴史の長い豆です。

日本には、奈良時代に、シルクロードを経由してきたものの他、明治以降になって、欧州から小粒の長莢系統が入ってきました。

現在「ソラマメ」といえば、青果用の、いわゆる「一寸そらまめ」が主体となっています。
「ソラマメ」全般についての解説は、拙文を参照ください。こちらです。

【　品種登録情報　】

この品種は、農水省に品種登録されています。抜粋し転載。

農林水産植物の種類 Vicia faba L.　（和名：ソラマメ種）
登録品種の名称 初姫　（よみ：ﾊﾂﾋﾒ ）
出願年月日 1989/10/11
登録年月日 1991/04/05
育成者権の存続期間 15年
育成者権の消滅日 1996/04/06
品種登録者の名称及び住所　協和種苗株式会社 （150-0036 東京都渋谷区南平台町15番13号）
この品種は、「於多福」の突然変異個体から選抜、育成された固定品種であり、青実の色が濃紅色、種皮の色調が暗赤褐色の青果用の品種である。・・・莢の長さはやや短、幅、厚さ及びそりは中、重さはやや軽、色はやや淡である。子座数は２．０～２．５、子実数は１．５～２．０である。青実の長さはやや長、幅はやや広、厚さは厚、重さは中、形は標準、緑色度は濃紅色、肉質は粉質、皮の堅さは中である・・・「於多福」と比較して、花の色が白が多いこと、青実の緑色度が濃紅色であること、種皮の色調が暗赤褐色であること等で、「陵西一寸」と比較してＭ有効分枝数が多いこと、青実の緑色が濃紅色であること、種皮の色調が暗赤褐色であること等で区別性が認められる。

食味が良いことで知られる、そらまめ「於多福」の変異種を選抜・育成した　とあります。

この品種は、「協和種苗株式会社」時代に、登録されています。後述。

ヴィルモランみかど社のホームページから　紹介文を引用。

1.莢は緑でも子実は赤い。
2.草姿は立性、草勢強く分枝も多い。耐寒性強く越冬も容易で作りやすい。
3.２粒莢が中心だが着莢数は多い。粉質で食味極上。
草勢　　　　：やや強
早晩性　　　：早生
一莢粒数　　：2粒
豆皮色　　　：赤
豆の大きさ　：中
作型　　　　：普通
収量　　　　：やや多
用途　　　　：青果

中間地では、秋まき～春どりの作型が一般的です。

【　ヴィルモランみかど株式会社について　】

当初、「みかど育種農場」と「協和種苗」が合併し、「みかど協和」となりました。
「みかど協和」の社名で覚えている人が多いと思います。
その後、グローバル市場対応のため、現在は日仏合弁会社「ヴィルモランみかど株式会社」に社名変更しています。

【　実際に栽培してみた　】

中間地にあたる地域ですが、あえて　春まきで栽培してみました。
越冬も容易で、通常は秋まきとなります。

育苗は無加温ハウスを使いました。
発芽適温は15〜25℃です。温度管理には注意して下さい。
2月末、ポットに播種～４月上旬定植。
発芽率は高い印象です。

害虫対策として、シルバーマルチを使いましたが、効果的な印象です。
移植後、なかなか大きくならないので心配しました。


5月　開花のようす。


直立性ですが、1ｍちょっとと、低い立ち姿です。
6月に入って、続々と実をつけ始めました。


暑さには弱いようで、収穫期間は短めでした。
多収を狙う場合は、やはり秋まきがオススメです。

アブラムシは、柔らかい新芽に集まる習性があります。
葉茎の頂上部分は必要ないので、落としてしまいましょう。

本種は固定種です。
貯蔵して、種取りする場合の注意点。
ソラマメゾウムシの被害にあうと、発芽しません。
ソラマメゾウムシの登録農薬はありませんが、スミチオンで良さそうです。
種取りで、穴あきを発見した際は、廃棄してください。

【　じっさいに食べてみる　】

サヤから出して、茹でて食べてみることにします。
ゆで時間　約２分とちょっと。

豆の赤茶色が抜けて、煮汁が濁っているのがわかります。
ミョウバンを加えると、色落ちせず茹でられるようです。

さて、ひとつぶ。
プリップリ♪　の実が、つるりと出てきます。


赤い色の豆から、鮮やかな濃い黄緑色。
けっこうギャップがあって、楽しいです。

甘味と濃厚さの感じられる、美味しいソラマメです。
フライにしてみました。


ホクホクした美味しさ。
これも　オススメです。