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晩白柚 ばんぺいゆ TX

カテゴリ:くだもの

大柄な果実ですが、思いのほか繊細で、ほれ込む理由があります。

ファイル名:banpeiyu202211tx.jpg

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晩白柚 ばんぺいゆ 

科:ミカン科 Rutaceae
属:ミカン属 Citrus

ザボンの仲間になります。

【 来歴と日本での普及 】

原産地は、マレー半島とされています。

江戸期に、当時の百科事典「大和本草」にザボンの記述があります。ザンボやザンボウ、唐九年母とか呼ばれたようです。
明治期にいたるまで、日本のカンキツの主は、「紀州ミカン」でした。
そんな中、1920年、農業技手・農学者で熊本県八代出身の島田弥市氏が、ベトナムの船の上で食べた柑橘が美味だったので、サイゴンの植物園から株を分けてもらい、地元に持ち帰って栽培しますが、広まるには時間を要したようです。島田氏は、ほかにも、ポンカン・生姜を広めた功績があります。

1930年、台湾から鹿児島県果樹試験場に「白柚」の株が持ち込まれ、八代で栽培。急速に一般家庭でも栽培され、のちに改良されて、在来よりも瑞々しい果実となったことから、この改良種が広まります。
「晩生」の「白柚(ペイユ)」なので、バンペイユと名付けられます。
切っ掛けがなくては、こうはいかないですね。
最初に栽培に取り組んだ、八代市は、現在でも国内最大の生産地。
熊本県で全体生産量の96%が栽培されています。ほか、鹿児島、大分。

改良を重ね続け、昭和52年以降、ハウスによる促成栽培に成功し、八代市という狭い地域で、特化した進化を見せます。
現在では、八代だけでなく、熊本県広域で、栽培が取り組まれているようです。


【 島田弥市氏について 】

自伝が残されており、PDFで閲覧できます。
台湾での作物調査をすすめたほか、郷里の熊本県八代郡種山村(現 東陽町)に戻られてまでを、短文に要領よくまとめられています。
ザボン種苗については、8頁あたりに纏められています。

以下 ママ文転載
○ 晩白柚(白肉ザボン)種苗の台湾移人と現況
 ザボン類は九州各地にも産し,台湾には多数の品種あるも,多くは果肉堅く, 酸味強く果実として喜ばれない。たまたま, 大正8 年2 月農事視察の為め南洋各地に出張の際航海中白肉ザボンが食卓に現はれ曽てなき軟肉にて美味を感じたので,此際南方より此の種苗を輸入して生産果を大衆に喜んでもらいたいと考えつつ各地を視察した。南ベトナム国サイゴン植物園視察の際, 白肉種のザボンの種苗を入手し,之を台北士林園芸試験場に栽植したるに,生育,結果良好にて,果肉軟く美味で頗る好評を博した。試験場で育ての親とも云ふべき桜井芳次郎鼓師は,此のザボンに晩白柚と命名した。台湾にてはザボンを柚と呼ぶが, 本種は晩生種であるから,晩白柚と呼ばれる(オクテシロザボンの意)。以来台湾に栽培が普及し, 日本向移出もされた。鹿児島,態本県下にも種苗が伝播し,八代市以南は気候温暖にて良果を産し, 栽培も増加しつつある。昭和4D年4 月八代市古麓町の産果が献上の光栄に浴した。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/24/3/24_KJ00002992854/_pdf/-char/ja

出張航海時に食べた白肉種が思いのほか美味しく、越南サイゴンの園地視察時に種苗を入手、台北試験場で栽培し、好評を得て「晩白柚」と名付けたとあります。
台湾に広めたほか、日本向け(鹿児島・熊本)にも伝えた様子が書き残されています。



【 食べた印象 】

とても大柄な果実です。バレーボール程の大きさの個体。
追熟が必要とされる果実で、市場流通のものを、指定どおり(入荷時点では10日後)を切ってみます。
切る前から、かなり良い香り。
切り方については、頭をかなり深く落とすと、解体しやすくなります。
実際に、手で割ってみると、アルベドと呼ばれる白い部分が分厚く、これで食べる所があるのかな?と思いますが、実際に食べると、結構な果肉量で、満足度が高いです。
何しろバレーボールに近いものが、半分食べられなくても、ソフトボール並に大きな果肉です。

香りのやさしさが、第一に印象に残りました。嫌みのない種類のものです。
この手の柑橘は、酸っぱいだけかなと思うでしょうが、意外なほど繊細な甘さとバランスをもっていて、なるほど島田弥市氏ではないですが、なかなかに深い味わいを持つ果実です。
大柄に似合わない、繊細さが印象に残ります。

食後に、大量の皮とアルベドが残ります。
砂糖漬けや、天日干しして、お風呂に入れるなど簡単なひと手間で、二度も三度も満喫できる柑橘。

香りがよくて、甘ければいいってもんじゃない。
平板な味覚表現が多い中、食品の持っている何か深さのようなものを、総合的に示してくれるような、そんな果実だなと思いました。
しかも、とても大きな、存在感のある柑橘なのになと、食後に、色々と考えさせられる体験になります。

202211改
202302改

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