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じゃばら ジャバラ 邪払
科:ミカン科 Rutaceae
亜科:ミカン亜科 Aurantioideae
属:ミカン属 Citrus
種:ジャバラ C. jabara
和歌山県で、「ユズ」や「九年母(クネンボ)」、「紀州ミカン」などが交雑してできた天然雑種柑橘。
和歌山県東牟婁郡北山村以外にも自生していたようですが、長らく努力し、「じゃばら」=「北山村」ブランドにしています。
「邪気を払う」ほど酸っぱい 転じて「邪払」というのが、名前の元とされます。
【 なにかと興味深い「北山村」について 】
和歌山県東牟婁郡北山村。
日本国内で1カ所しかない、県境をまたいで飛び地になっている村です。
人口約400人。信号機のない村。
北山村公式HPより
三重県と奈良県の間にあり、和歌山県と接していません。
不思議ですね。
元々林業が主な産業で、川に筏(いかだ)を浮かべて木材を運んでいました。筏をあやつる筏師を職業とする人が多く、川を下った新宮市との関係が深かったようです。
こんなルートです。
明治4年、廃藩置県の時、新宮市は和歌山県になり、北山村は「どっちにする?」→新宮と同じ和歌山県に入る!となったそうです。
筏下りはこんな感じです。 スリル満点 北山村HPより
北山村観光サイトより
木材輸送が、トラック輸送主力に変わった今は、「観光筏下り」や、ラフティングといった観光のほか、この「じゃばら」が、村おこし産業として重要な位置づけになっています。
「じゃばら」と加工品の、販売サイト運営しています。
https://kitayama-jabara.jp/
「株式会社じゃばらいず北山」は村が出資した事業会社。
以前は村が直接運営していたというのも、珍しいです。独立心の強い村だからこそ決断できる事なのでしょうね。
「じゃばら」を世間に広めようと努力したのが、福田国三氏(和歌山県東牟串郡北山村竹原61)。
農水省にある「じゃばら」の品種登録者でもあります。
【 品種登録情報 】
品種登録されています。このことは、産業上も重要な布石になっています。
農水品種登録DBを転機一部抜粋
作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Citrus L.
(和名:カンキツ属)
登録品種の名称 じゃばら(よみ:ジャバラ )
登録年月日 1979/11/01
育成者権の存続期間 18年
育成者権の消滅日 1991/11/02
品種登録者の名称及び住所 福田国三 (519-5602 和歌山県東牟串郡北山村竹原61番地)
本品種は、かんきつ類の中でゆず近縁の新種で既存のゆず近縁種と明確に区別される形質のうち、特に著しい特性をもつ形質は、①果形、②果面の粗滑、③果汁の多少、④香気、⑤成熟期、⑥貯蔵性であり、その特性は次の通りである。(1)果形は円または扁円形でゆずにやや似ているが、果梗部にやや深い放射条溝が数条走り、その間に多数の浅い放射条溝があり、花柱根の周囲はやや窪み、ここにも浅い放射条溝が数本みられる。(2)果面は黄色で油胞が窪み凹凸が激しく、果皮はやや革質で粗剛である。(3)果汁はきわめて多く、賢臓形のじょうのうは柔らかく、搾汁は容易である。(4)香気はわずかにゆず香のある弱い九年母臭で、ゆず類、すだち、きず、かぼす等と異なる。(5)成熟期は11月下旬で、11月~1月の間に収穫できる。(6)貯蔵性は極めて高く、簡単な貯蔵で11月頃から翌年4~5月頃まで貯蔵しても果汁の減少は極めて少なく、風味も減退しない。(7)その他、樹は喬木性で樹高は3m内外、枝条はやや密生し、樹姿は長円形、耐寒力はゆずに次いで強い。枝条は稜角があり節間やや短く無刺無毛、花は樹冠内部の短花枝に着き単生、まれに長さ7mm程度の大花梗に小数房咲することがある。
【 取り扱い注意:花粉症に良いという話 】
こういう話には、尾ひれがつくので、慎重にならざるをえない点ですが。なかなか特徴のある柑橘。
北山村在住の、福田国三氏の園地に1本だけあった「じゃばら」を、なんとか広めようと奮闘。
1979/11/01に品種登録され、村をあげて新品種を売り込もうと色々取り組んだものの、うまくいきません。
あきらめかけたところ、島根県在住の女性が毎年20 kgも取り寄せ購入していることがわかり、理由を聞いたところ、「息子の花粉症に効く」とのことで、調査。
調べたところ、びっくりの結果。北山村公式HPより引用。
「ナリルチン」が極端に多い果実とわかりました。
単位が1個あたりとなっていますのでご注意ください。
グレープフルーツや伊予柑よりもずっと小さい「じゃばら」。
含有量が、尋常ではありません。
とくに、皮部分に多く含まれています。
「ナリルチン」は、自然界にある辛味、苦味や色素であるフラボノイドの一種。
福田氏の原木は今も残っていて、歴史は引き継がれています。
【 特許情報 】
柑橘のアレルゲンが酸化すると、炎症の原因となり、ジャバラの「ナリルチン」効果が発揮てきません。
そこで、ジャバラからアレルゲンを除去して、抗アレルギーサプリメントを作るという特許。他にも数件出されています。村の公式HPにも出ていますので御紹介。
特許5323127
【発明の名称】抗アレルギー飲食品
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【氏名又は名称】株式会社ジャバラ・ラボラトリー
【課題】 高い抗アレルギー性を備えているとともに、保存し易く、環境にも優しい抗アレルギー飲食品を提供する。
【解決手段】この発明の抗アレルギー飲食品は、じゃばら果皮を含んでいるものである。なお、この発明の抗アレルギー飲食品のじゃばら果皮としては、熱乾燥法、フリーズドライ法、スプレードライ法などによって乾燥した乾燥果皮やこれを顆粒状に加工したものが例示できる。また、この発明の抗アレルギー飲食品は、じゃばら果皮以外の成分、例えば還元麦芽糖などを含んでいてもよい。
じゃばら普及協会が動画を出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=f1wRHcilAXI&t=3s
「株式会社ジャバラ・ラボラトリー」「じゃばら普及協会」ともに、吾妻 正章(あずませいしょう)氏が代表をつとめています。
医薬品メーカーの元研究員だったそうですが、北山村との関係はよく判りませんでした。
【 じっさいに食べてみた 】
この個体は、12月中の和歌山県産の個体。すっかり黄色く色づいています。
元は緑色でしたが、完熟するにつれ、黄色く色づきます。
ゴツゴツとした皮で、皮むきは難しいです。
ユズの仲間で、「香酸柑橘」の一種とされるので、かなり酸っぱいのかなと思っていたら。
意外に甘さを感じる果実です。
もちろん酸っぱいのですが、甘さのあとに、圧倒的な酸味がぐわーっと来るので、甘味は感じなくなります。
「苦くて酸っぱい」というコメントが多いですが、完熟しているので、苦味は少なく、案外美味しいなという印象です。
香りは独特で、他の柑橘で嗅いだような、ちょっと特徴のある香りがあります。
種はありますが、思ったほど多くはない印象です。
完熟していれば生食も悪くなさそうな印象です。しかし、問題は、その食べにくさにあります。
この柑橘の、おいしい食べ方は、ジュースではないかと思います。
酸味たっぷりな中に、芯のある香りが存在感たっぷり。
酢の代用、カクテルの材料、ジュースとして、などなど。
半切りをそのまま絞って、果汁を製氷皿に入れ冷凍するのが良さそうです。
それだと、皮の栄養が摂れません・・ということでしたら、まるごとミキサーにかけて絞るというのが良さそうです。
世間の情報を無視して、りんごむきをして食べてみることにします(笑)。
こんな感じに。
おすすめできません。あたりが、果汁でじゅわじゅわになりました。
かぶりついてみると、食べやすくはなったのですが、ハッサクのような食べ方は難しいとおもいました。
案外やわらかでジューシーな果実です。
じょうのう膜は、かなり厚め。
そのまま食べるのも、案外ありかもしれませんが、通常は敬遠すると思います。おまけに種もあります。
しかし、青みのない完熟した個体は、なかなかにパンチのあるおいしい果実でした。酸っぱいですが。
実際の市場では、「じゃばら」は生食用ではなく、加工市場で存在感ある果実。
生で食べたくなる、という人は、ごく少数なのだろうと思います。
皮に、重要な栄養素が含まれているというのも、生食用の点でポイントがずれています。
健康志向を切り口に発展の糸口をつかんだ、北山村の判断は間違っていないと思います。
202201