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シルバー ベル
山形県生まれの洋梨品種です。
晩生で、11月くらいから旬を迎えます(産地で前後します)。
日本で生まれた、というと、意外でしょうが、1957(昭和32)年に山形県園芸試験場でラ・フランスの自然交雑実生から選抜育成されたものとされます。親品種の特定は出来ていません。
現在の農水省品種登録では確認・検索はできません。
育成者は、鈴木寅雄氏。当時の置賜分場長だったそうです。お名前の「鈴」=「ベル」であること、外観がベル型の果実であることから、このように命名されたようです。
山形大学学術機関リポジトリ
「山形県における西洋ナシ栽培とその将来」
に、この洋梨の栽培の経緯が一部記述されています。
以下一部引用 4頁目
「Silver Bell は昭和32年に山形農試置賜分場においてLa France の自然交雑実生の中から選抜されたもので,昭和37年置賜91号として登場し,昭和53年に SilverBell と命名され,有望品種として山形県農作物品種審議会の承認を得ている」
親品種である、「ラ フランス」 とかなり違う個体になった点は、なかなか興味深いです。
主な違いについて。
① 晩生であること
10月末に旬を迎える「ラ フランス」よりも、晩生の特徴をもっています。
「ラ フランス」よりも一か月ほど遅い時期にあたります。
② かなり大型であること
500g前後になる大きさも珍しくありません。
「ラ フランス」の、倍くらいの大きさになるといいますから、大きな違いです。
西洋ナシの多くは、ビン型の果実で、形がベルに似ています。
生まれ故郷の山形では、12月からが旬。
日持ちも良い品種です。
出回る時期が、クリスマスをイメージさせるのでしょうか。
楽し気なネーミングだなと思います。
ちなみに、山形生まれの洋梨には「バラード」「メロウリッチ」もあります。
【 西洋梨 と 日本梨 】
梨の原産地は、インドの北、中国西南部と考えられています。
大元は、「マメナシ」と呼ばれる、小さな実をつけるものだったようです。
洋の東西にわかれ、独特の分化と交配を繰り返します。
果実特性として、大きな違いがいくつかありますが、西洋梨は収穫後に追熟して食べるのに対し、和梨は追熟しません。
また、和梨には、砂っぽいジャリジャリした「石細胞(stone cell)」の食感がありますが、洋梨には比較的少なく、トロリとした果肉が多いです。
西洋梨は、形状も、「洋梨形」といわれる、ビン状の形態が多いです。
和梨には、ハイブリッド以外この形状はありません。
【 日本の西洋梨栽培の歴史 】
日本での西洋梨栽培は、明治の初め頃にさかのぼります。官営育種場である三田育種場(現在の港区芝)で養成され、各地に配布されました。
「近代日本における果物の普及に関する一考察」
清水克志氏によると、明治期に126品種もの洋梨が導入され試されたようです。リンゴ、ブドウも多くの品種が導入されています。他の作物に比べ、期待が大きかったことが判ります。
本文への リンク
現在の洋梨大産地 山形には明治20年ごろから移植されていますが、その後枯れ死しています。
愛知、兵庫、岡山などでは、輸出を目論んで栽培が始まりますが、「輸出に失敗した」とあります。
明治期には、リンゴはすでに輸出していたそうですから、日本での普及は、簡単ではなかった様子がうかがえます。
気象などの環境が洋梨栽培に適した場所が少なかったといえます。
結果として、この地域では散在する形で樹が残っている状態です。
現在残っている品種は、日本の気候に順化したものが残った、 ともいえます。
最終的に、夏は暑いものの、少雨で乾燥気味の新潟、山形などの東北地方や、長野などで適性が合ったのでしょう、西洋梨の特産地として残っています。
【 食べてみた 】
9月末に、地元(中間地)の農家から、2度頂いています。
やはり、収穫適期ではないのか、10月初旬になって痛みが出てきた時点でも、まだ洋梨らしい食味ではありませんでした。
その後、12月に秋田県産を入手しました(2020年)。
中旬にはすっかり色づいて、食べごろ判定もしやすい印象です。
以前の苦い経験がありますので、とっとと切ることにします。
なめらかな中に、少し堅さを感じる状態。和梨ほどではありません。
ただ、ちょっと早かったのかもしれません。
強い甘さもありますが、酸味も同時に感じられます。
混然一体という感じ。
合間に、香りがやってきます。
果汁はたっぷり。
12月中旬を過ぎたころに切っています。
食べごろ判断として、
① 色の変化
② 軸の周りの軟らかさ
を判断基準にすれば良いのではないかと思いました。
変色しても、実の追熟が合わないと感じたら、ビニールに入れて冷蔵庫でしばらく様子をみても良さそうです。
なかなか微妙な部分もあるのは、洋梨の面白みでもあります。
一連の観察結果と食べごろを合わせるのも、楽しみを生み出すストーリーのようなものと考えてください。






