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清麻呂 きよまろ
珍しい、和洋混血の梨と洋梨の交雑実生。
洋ナシと和梨の交雑には、ほかにスイスの会社が育成した「ラフザス」があります。
また、中華梨と和梨の交配例では、「王秋」「豊華」があります。
まだ有るのかも知れませんが、「和」梨と、「洋」「中」の交配で現在も流通しているのは、極少ないです。2025
この梨は、外観が まるで洋梨ですが、追熟を要しない梨 とされています。
【 品種登録情報 】
この品種は農水省に品種登録されています。抜粋し転載。
作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Pyrus pyrifolia (Burm. f.) Nakai var. culta (Mak.) Nakai (和名:ニホンナシ変種)
登録品種の名称 清磨呂 (よみ:キヨマロ )
登録年月日 1986/08/08
育成者権の存続期間 18年
育成者権の消滅日 1998/08/11
品種登録者の名称及び住所
花澤茂 (709-0856 岡山県赤磐郡瀬戸町下274番地の6)
この品種は、「太平洋」と「バートレット」の交雑実生であり、果実の外観は洋なしに似ているが追熟日数が短い、晩生種である。・・・果実の外観は倒三角形で「太平洋」に似るがやや長めであり、果実の大きさは大(平均300~400g)で「太平洋」より小さく「バートレット」より大きい。果皮の色は黄緑、果面のさびの発生は多、果点は大きく密で果面の粗滑は中、有てい果の有無は有、果梗の太さは中である。果肉の色は黄白、果心の大きさは小、肉質は「太平洋」と「バートレット」との中間、果汁は少、甘味は多、酸味は少、渋味は無、香気は微である。成熟期は育成地(岡山県赤磐郡瀬戸町)で10月中・下旬で「太平洋」より20~30日遅い。果実は収穫後追熟せず直ちに食べられるが、食味は2、3日後から約2週間以内が良い。貯蔵性は短いが「太平洋」より長い。「太平洋」と比較して、成熟期が遅いこと、果実が小さいこと、果実の貯蔵性が長いこと等で、「バートレット」と比較して、成熟期が遅いこと、果実の貯蔵性が短いこと等で区別性が認められる。
「太平洋」は、「ラ・フランス」を種子親として「晩三吉(おくさんきち)」との交雑から得られた品種。
バートレットは、世界で最も多く栽培されているメジャーな洋梨品種です。
二世和洋混血と洋梨の組み合わせということになります。
ちなみに、ラ・フランスは日本名です。
フランス本国では気候が合わず、絶滅しています。
ラ・フランスのフランス名は、発見者の名をとって「Claude Blanchet(クロード ブランシュ)」です。
日本だけのオリジナルの名前で広まって、今も愛食されているというのも、不思議なご縁としか言いようがありません。
【 育成者 花澤氏 について 】
登録者は、ぶどう育種家 花澤茂氏。
岡山県で「花澤ぶどう研究所」を運営。
花澤茂さんの人柄が偲ばれる記事をご紹介。
新品種支援事務所代表 Hiro Iwasawa さんのnoteで取材されていて参考になる記事です。
リンク以下。
トゲル Hiro Iwasawa 「儲かる農業を実証しようと56歳でブドウ農家となり、多数の品種を開発」
https://note.com/hiro_iwasawa/n/n098c65485f6d
Hiro Iwasawaさんは、元農水省。前書きが長めですが、楽しんで読んでください。
戦後の窮乏生活の経験談や、岡山大学農学部卒業後 高校教員や農業改良普及員の経験を述べています。
高くても売れる品種がないなら、自分で育種しよう、と思い立ったとのこと。56歳のこと。
何かを始める時って、ふと思い立って始めるほうが、運命的なエネルギーが持続するのかもしれません。
おいしく大粒で人気のブドウ品種「瀬戸ジャイアンツ」の育成者として著名です。
花澤さん本人が「清麻呂」について残している貴重な弁がありますのでご紹介。
花澤ぶどう研究所 HP内
夢多きぶどう栽培(人生プリズム 平成五年より)
https://www.setogiants.com/profile.htm
ブリーダーの事業としての厳しさを述べられています。
どうして梨の交配に取り組んだのか、理由は述べられていませんが、結果として個性的で美味しい梨を残して下さいました。
【 食べてみた印象 】
長野県松川で入手。
純粋な洋梨と思い込んで購入。
外観上は、おしり部分に突起が複数個確認できます。
酸味のある良い香りが、皮からも感じられました。
堅さはあまり無く、洋梨のようにスパスパと切れて、皮むきも容易です。
強い酸味のあと、強い香りと、強い甘味。
どれも鋭くて、力強い味わいです。
食感は和梨のような感じではなく、洋ナシに近いものです。
一部がズルリとした、柔らかい状態になっていました。
追熟不要のようですが、購入からさらに追熟状態になった状態を食べたので、印象は少し違うのかもしれません。何とも言えないところです。
印象は「パンチの効いた洋梨」という印象です。
適度な酸味がアクセントになっていて、香りもよく、とてもとても美味しい梨でした。
また食べたい洋梨のひとつ。