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セルリー セロリ オランダミツバ 清正ニンジン
英:celery
科:セリ科 Apiaceae
属:オランダミツバ属 Apium
種:セロリA. graveolens
和名「オランダミツバ」は、江戸期にオランダ船で日本に来たミツバに似た野菜と考え、そう呼ばれるように。ちなみにミツバやパセリも、セリ科の植物です。
昔の人たちは、するどい感覚を持っています。
ここでは「セルリー」としたいところを、「セロリ」として記述を続けます。
【 来歴 】
セリ科葉野菜のセロリは、ヨーロッパ地中海あたりが起源とされます。
東方にも分かれて流通した結果、西洋種と、中国経由のものなど、環境に合わせた変異をしました。
古代ギリシャ・ローマ時代にはすでにあったそうです。
整腸・強壮の薬草や香料として認識していたようです。
また、魔除けとしても活用されたそうです。
食用として利用されていたかは、わかっていません。
純粋に食用とされたのは、のちの事と思われます。
日本には、16世紀 加藤清正が中国経由のものを持ち帰ったものが「清正ニンジン」と呼ばれたとされます。ニンジンもやはりセリ科。植物分類上、正しく言い当てています。
その後、江戸末期にオランダ船によって西洋種が持ち込まれましたが、強い香りが馴染めず、定着しませんでした。
無理もない気がします。
現在も主な流通種である「西洋種」が再び入ってきて普及したのは、案外遅く、昭和になってからのこと。
ビフテキにエビフライ、ハンバーグ。
食事の洋風化が後押しになって、昭和30年以降に野菜として普及しました。
食生活が大きく変化することで、受け入れられるようになった野菜のひとつです。
【 日本での栽培 】
2022(令和4)年 農水省作物統計から、円グラフに落としてみます。
接近した地域で栽培されているような印象ですが、実は、栽培環境だけでなく、別の理由で栽培が盛んになった背景があります。
主な米軍基地を配置して、栽培上位20位までを色塗りしてみます。
けっこう相関関係があることがわかります。
長野県 軽井沢は、明治以来、宣教師らの避暑別荘地が建てられ、外国人の要望で高原野菜が作られ始めた歴史的経緯があります。
静岡では、朝鮮戦争特需や、米軍東富士演習場など米軍の需要に応えて、清浄野菜のひとつとして、セルリー栽培が広まりました。
同じように、福岡では、米海軍佐世保基地に納品するため、栽培が盛んになったようです。
在日米軍の人数は、現在、安全保障上の理由で非公開になっています。
概算で青森県三沢で8千人、東京福生近辺で7千人、神奈川 厚木周辺で6千人 横須賀周辺で1万1千人、山口 岩国で2千人、長崎 佐世保で4千人、沖縄で3万人以上が住んでいるようです(2007年頃の資料)。
日本人の嗜好変化に合わせて栽培が広まっただけでなく、外国人居住者のニーズから栽培が盛んになったと考えて良さそうです。
【 セロリの分類と品種 】
いくつかの捉え方がありますが、総合します。
・白色種(ホワイトセロリ)・・・茎も白いタイプ/黄色種とも
・緑色種(グリーンセロリ)・・・茎も葉も緑色のタイプで小型
・中間種(上記2つの中間)・・・国内で普及しているタイプ
・キンツァイ(芹菜) ・・・中華系改良種
日本での栽培は、現在ほとんどが「中間種」になっています。
「コーネル619」という品種や、その改良種「新コーネル619」、ほか「改良コーネル619」等の選抜品種が栽培されています。
緑色系に近い「トップセラー」もありますが、可食部が堅いのが難点です。
消費量が多いアメリカでは、香りが強く、筋が太くて肉質も堅い、緑色種が好まれます。
品種を明示して売られることがほとんど無いので、消費者にはピンとこないところで、セロリの多様性を楽しむというところまでは行っていません。
【 セロリの栽培適地 】
生育期間が長く、生育温度が15~20度くらい。25度以上になると、生育が悪く劣化します。
長野県では、露地で標高1000mほどの冷涼地が産地。春植えで夏にかけて収穫期を迎えます。
静岡県では、ハウス中心で、冬~春どりの作型です。
栽培適地は広くありません。
また、播種から収穫まで、半年ほど面倒を見なければなりません。
気軽に家庭菜園、というわけにはいかないようです。
なお、茎の部分がしろくなったものが流通していますが、段ボールなどで遮光する軟白栽培です。
たっぷり肥料が必要。肥料不足は肥大しない理由のひとつです。
虫達も大好きなようで、なかなか手のかかる植物です。
【 セロリの食べ方 】
下処理として、スジ取りがあります。
フキのスジ取りの要領でスジを取ります。ピーラーで剥いてもいいですね。
あまりスジを感じないものもあります。
買ったら、葉と茎はバラバラにしたほうが、葉っぱが水分を吸い上げないので劣化が遅くなります。
定番のサラダ、炒め物やスープのほか、和え物・きんぴら・マリネなど、けっこう使い道があります。
食感が良く、生では苦手という人も、加熱すると美味しく変身します。
香辛料に近い使い方を覚えたいです。
セロリの特有の香りの元は、「アピオール」でパセリにも含まれているものです。食欲増進や口臭予防効果があるとされます。肉など臭みをやわらげる効果もあります。
セロリは、切り方でけっこう食感や印象も変わります。
太い所は千切り、細い所は斜めや、そぎ切り。
みじん切にすると、タルタルソースやチャーハンなどにも使えます。
カットすれば冷凍保存できますので、無駄なく使いたいですね。
とにかく捨てるところがない野菜。
文科省 食品成分データベースにデータがあります。
セロリ 葉柄 生 が公開されています。
(セルリーでも検索できます)。
成分比較が必要なときご利用ください。
セロリの充実したレシピ ムック本を紹介。
「いいことずくめのセロリレシピ」角川SSコミュニケーションズ
2009年刊ですが、まだ入手できます。
【 セロリに関連した仲間をご紹介 】
セリ科には、にんじん、パセリ、みつばなどがあります。
セロリ近縁の仲間をご紹介
・根セロリ(カブラミツバ、セロリアック)
セロリの変種。葉や葉柄ではなく肥大した根茎が食用。葉もたべられなくは無いですが、苦味が強くて、ゴワゴワしています。
拙文 セルリアック 解説はこちらをどうぞ。
・スープセロリ/ハーブセロリ
セロリの原種に近いものとされます。何度か伸びてくるので、長く収穫できます。
庭先でのポット栽培にも向いています。種も入手しやすいです。
・スプラウトセロリ / サラダセロリ
セロリのスプラウト。水耕栽培が多いです。香り控えめでやわらかく食べやすい。
【 流通している品種 】
「改良コーネル619」 / 株式会社日本タネセンター
長野県南信地方で改良選抜された品種
「新コーネル619」 / タキイ種苗
黄色種と緑色種の特徴をとり入れた黄軸の中間種で、そろい性が向上
「セルリー・トップセラー」 / タキイ種苗
淡緑のF1。大株のほか、小株どりが可能
長野県オリジナル品種は以下
「松本1号」
「あずみ野1号」
「幸(ゆき)みどり」
いずれもコーネル系の品種を改良した長野県オリジナル品種。
「幸みどり」は長野県で品種登録しています。
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