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モロヘイヤ タイワンツナソ シマツナソ 台湾綱麻 縞綱麻 モロヘイア
Jew's marrow
科:アオイ科 Malvaceae
亜科:Grewioideae
属:ツナソ属 CorchorusL.
種:シマツナソ C. olitorius
【 概要 】
縞綱麻とも。タイワンツナソが和名です。
従来は、シナノキ科に分類されていました。シナノキ科とすると、唯一の食用植物ですが、現代のDNA解析で、分類はアオイ科になっています。
北アフリカ原産の植物とされますが、「そのあたり」という所まではわかっていません。原種に近いものがあちこち見つかるからかもしれません。いずれにせよ、高温環境を好む植物。
紀元前16-17世紀ごろには食べられていたようですが、毒物があることが理解されていました。
アジア系移民集団ヒクソスがエジプトを占拠する際、住民が食べて毒がないとわかったと言いますから、実際にどの程度まで一般に食用として広まっていたのかはわかりません。
現在もエジプトではさかんに食べられます。
栄養価が高くて、別名「野菜の王様」「王家の野菜」とも呼ばれます。
モロヘイヤの語源は、アラビア語の「ムルーキーヤ(molokheiya)(王様のスープ)」が訛ったではとされますが、いずれも俗説の域を超えません。
医者のすすめで病状がモロヘイヤのおかげで快癒したという話も、実は尾ひれがついた後付け話かもしれませんね。
参考:「クレオパトラは、本当にモロヘイヤを食べていたのか」
https://mololab.com/special/cleopatra.html
同族には30種以上あるとされます。
モロヘイヤは、栄養価の点では申し分ない野菜。
ヨーロッパに伝わったのも18世紀以降のようで、ずいぶん後のことです。
【 系統と利用 】
麻繊維の原料である、黄麻(こうま)は「ジュートjute」と呼ばれ、茎は繊維原料として利用されています。同じ仲間のモロヘイヤからも繊維は取られますが、黄麻の方が良質で、モロヘイヤはもっぱら食用として評価されています。
野菜名と実用植物としての名前が併存しています。
ジュートには,カプスラリス種(Corchorus capsularis)とオルトリウス種(Corchorus olitorius)があり,食用になっているのは後者のようです。タイワンツナソもオルトリウス種。
【 日本への伝来 】
昭和30年代には、日本にこっそり入っていたようです。エジプトからの帰国者が、モロヘイヤの味をなつかしんで、自家菜園程度でひっそり栽培していました。
実際に普及したのは、ずいぶん最近のこと。
故 飯森嘉助氏(拓殖大学名誉教授・アラビア語学者)が、モロヘイヤの紹介と普及に努め、1980年代「全国モロヘイヤ普及協会」を設立します。栽培法から食べ方、優位性などを説いて、現在の食卓にのぼるまでに普及活動をしてきた経緯があります。
1985年ごろから本格的な栽培が始まりました。
今では、全国の庭先のほか、産地を形成し、経済作物としての地位を確立しています。
夏場には貴重な葉物野菜として、重宝されます。
今では子供アニメ「はなかっぱ」のエンディングソングにも出てくるほどのメジャー野菜になりました。
【 特徴と栄養素 】
モロヘイヤは、アオイ科の植物。
近縁に、トロロアオイ属のオクラがあります。
どちらも、細かく刻んだり、茹でると、トロトロの粘りのある食物。
栄養豊富なことは知られていますが、意外に「カルシウム」の多い野菜です。
実際にほかの野菜と比較してみます。
「βカロテン」がとても豊富。リンなども重量ベースでは優良な栄養成分をもった野菜だとわかります。
鉄分もホウレンソウやブロッコリーに比べ遜色ない優秀さ。
夏場は汗とともにカリウムが体外排出されるので、夏場に身近な野菜として重宝するわけです。
日本での生産量の多い県を並べてみます。H30農水資料をもとに制作。
やはり北の地方では生産量は少なく、南方でさかんです。
【改良種について】
これほど優良な野菜、「モロヘイヤ」。
意外なことに、改良種のないまま、現在まで脈々と継承されています。
栽培は食用のオルトリウス種(Corchorus olitorius)がメイン。
国内では、香川県が「さぬきのヘイヤ」が、2018/06/25新品種として出願公表されています。
可食部の多い、直播栽培を軸とした経済作物として栽培体系を広める意図での改良。
登録されれば、モロヘイヤで初の国内新品種。新しい情報を待つ必要があります(2022.06時点)。
【毒性について】
モロヘイヤの種には強い毒成分「ストロファンチジン」が含まれており、混入したエサを食べた牛が死亡したという経緯もあって、危険性が知られています。
「サヤ」と「タネ」は食べてはいけません。
少量でもめまい、嘔吐の中毒症となります。
また、幼葉にも、多くの「ストロファンチジン」が含まれます。成長とともに減少しますが、いずれにせよ、一定以上の大きさになった時点から葉茎を食用に出来るとされます。
成長の経過とともに、毒成分「ストロファンチジン」が増減することが実証されています。
モロヘイヤ(Corchorus olitorius)の生育過程におけるストロファンチジン配糖体及びジギトキシゲニン配糖体の消長 : 大熊 和行, 小川 正彦, 阪本 晶子, 志村 恭子, 中山 治
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfcs/8/2/8_KJ00005714712/_article/-char/ja/
茎の毒性に言及する論もありますが、詳しくは農林水産省 モロヘイヤ中毒症状の解説をご覧ください。
こちら
いずれにせよ、生産者は、サヤや種、若い葉のコンタミネーションには強く留意されたいところです。
変わった利用法では、アフリカで毒矢の成分として使われたとか。物騒ですね。
【青果以外の利用法】
先述の繊維としての日用利用のほか、食用にも幅広く使われます。
各地で村おこしの特産品として、加工食品が多く出ています。菓子・麺・餅・パン・飲料・ふりかけ・アイス・がんも・ゼリー等々。
乾燥し粉末にしたものは、ヌメリがなく用途も広まります。30秒ほど茹でて乾燥させます。栄養価が濃縮されるので一石二鳥です。
ふりかけは、電動ミルがあれば自宅でも簡単に作れそうですね。
トップクラスの栄養価を保存できるので、是非トライしてみて下さい。
【栽培上の留意点】
高温環境を好む植物です。直播・苗どちらでもいいですが、失敗したくなければ気温がグングン上昇した頃のほうが発芽率は良いです。苗の場合、鉢上げ時に根っこを切らないよう注意。
50cmほどで摘芯し、側枝を成長させます。
強風で倒れないよう、支柱があったほうが良さそうです。
夏に旺盛な生育を見せるので、暑いですが、3日に1回ほどは収穫しましょう。
無農薬でもいいとされますが、ネコブセンチュウや、アザミウマ・ナメクジ・ダニ・コガネムシの食害があります。
【 食べ方 】
シュウ酸を含みますので、一般にサッとゆでて下処理します。
和風利用だけでなく、本場のエジプト風モロヘイヤスープに、是非挑戦してください。
ごはんにも、パンにも合う ひとしな。
本場ではギーと呼ばれるバターの加熱加工品がつかわれる場合がありますが、通販でも入手できます。
ウサギ肉のダシも使ったりするようですが、こちらは入手が難しいので、チキンベースで先ずは作ってみましょう。
202309改