吉川ナス　吉川なす　　よしかわなす

科:ナス科 Solanaceae
属:ナス属 Solanum
種:ナス S. melongena
【　歴史　】
福井県鯖江市の特産品。
種の保存は1000年以上前にさかのぼるようで、長く自家採種されてきたナス。『鯖江市伝統野菜等栽培研究会』の会員で、鯖江市内に圃場を持ち、圃場管理できる人だけ接木苗の供給を受けることができます。
一時は、生産者が一軒だけになったようですが、鯖江市伝統野菜等栽培研究会が広め、現在は約1万個の生産となっています。

【　系譜　】
「加茂なす」のルーツとも考えられています。形状・形質ともに、加茂なすに似ています。
形状などは、「大和丸なす」に似ているとも思えますが、加茂ナスから選抜されたものとされていて、こちらは、はっきりとした刺（トゲ）があります。「矢田系」「平和系」「大柳生系」があります。いずれも大和丸なすです。系譜上の参考になるでしょう。
大枠で見た系譜では「斧川（せりかわ）」と呼ばれる、加茂なす（大斧川）と同系の大型丸なす。

【　GI登録について　】
気候や環境、伝統に対して与えられる特産地、GI登録がされています。茄子、なすではなく、「ナス」。
ＧI登録内容以下抜粋
名称（フリガナ）：吉川ナス（ヨシカワナス）、Yoshikawa Nasu、Yoshikawa Eggplant
生産地の範囲：福井県鯖江市
農林水産物等の特性（一部省略）
鯖江市の旧吉川村一帯（現在の川去町、田村町付近）を中心に作られてきた楕円～やや巾着型の丸ナスで、肉質がよく締まっている緻密なナスである。外皮が薄いため、果実に傷がつきやすく、現在ではハウス栽培を主としている。また、水分量が多いため、火を通すととろみのある食感が生まれる。果実の色は黒紫色で、光沢がよく、ヘタの部分には鋭いトゲがある。大きさは、直径10cm 程度で約300g（ソフトボールほどの大きさ）の重量である。味が濃く、大果で独特の形をしていることから、市内外の料亭や高級レストランで使用される。
市場関係者からは「少数精鋭の熟練農家が生産、また組織化されることで品質、数量が安定しており、商品の出荷に関して厳しい品質検査が行われている。また、多くの料理人から、ナスの種が小さくて煮崩れしないと喜ばれており・・・
補助金制度も拡充されていて、新規就農のポータルにもなっています。

【　栽培指針　】
GI登録品なので、栽培指針が示されています。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/notice/pdf/21doc2.pdf
台木を用い、連作障害を防いでいます。台木は不明。苗は、『鯖江市伝統野菜等栽培研究会』が管理したものです。使用農薬も指定されています。
１本の樹から40個ほどしか採れないようです。かなり厳しい基準なので、基準以下は「加工用」とされるようです。どう活用されるのか気になるところです。
秀品規格については、鋭いトゲがヘタ部分にあるとされています。ご参考に。
原原種の保存については不明ですが、長らく同じ品質を保っているという点で貴重。今後も、品質は守られていくことでしょう。

【　印象　】
ソフトボールよりも少し大きいかなという、丸型の茄子。皮はごく薄く、ステーキにしてみましたが、皮むきしなくてもいいかもしれません。崩れにくく、トロリとして実のしまった美味しいナスです。
直売所のある西山公園で入手可能です。ご当地メニュー「なすバーガー」も食べてみましたが、意外な美味しさ。お肉でなくてもしっかりとした味わいが感じられる良いメニューです。田楽も美味しいですね。
食べた感じも、加茂なすや、大和丸なすに似た印象です。ち密で、しっかりと実の詰まった良質な茄子。ただ、大和丸なすにあったような、危険なほどの鋭いトゲはこの個体では少なく、扱いやすかったです。

【　その他　】
芹川系は、タネの保存性も良いようで、種の保存に貢献しています。
販売地は、もっぱら福井県内で、かつては県外にも出荷されていたようですが、現在は少ないと思われます。