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万願寺とうがらし TX|心にチクっとささるワードで作る「ちくわPOP(ちくわぽっぷ)」|農産物直売所やスーパーの青果売り場の活性化に!農に特化したPOPが無料!!

万願寺とうがらし TX

カテゴリ:やさい

「万願寺とうがらし」と、「万願寺甘とう」は区別してください。
京都府産のものについても 詳しく後述します。

ファイル名:manganji20220814tx.jpg

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万願寺とうがらし

ナス科トウガラシ属の野菜。
範囲は広くて、ピーマンや、ベル型のピーマン、シシトウガラシ、小型で辛いトウガラシ、大型のパプリカなど、さまざまな色・形・大きさをしています。
トウガラシの仲間をざっとおさらいした後、万願寺とうがらしについてお話したいと思います。


【 トウガラシ属と歴史 】

トウガラシ属の食用には5種あります。
カプシクム・アンヌーム(Capsicum annuum L.)
カプシクム・フルテッセンス(C. frutescens L.)
カプシクム・キネンセ(C. chinense Joeg.)
カプシクム・バッカートゥム(C. baccatum L.)
カプシクム・プベッセンス(C. pubescens Ruiz.et Pav.)


もっとも広く栽培されているものがアンヌーム種で、日本国内でも沖縄島とうがらし(フルテッセンス種)を除き、すべてアンヌーム種です。
「タバスコ」はフルテッセンス種、辛みの強烈な「ハバネロ」はキネンセ種になります。


主な流通種である、「アンヌーム種」の起源は、メキシコ南部~中央アメリカと考えられ、有史以前から栽培され、南米チリで多様性を持ちました。
コロンブスの航海時代に西洋に伝わり、のちインド~中国~日本へ伝わったようです。
16世紀前後ですから、案外新しく伝来した作物です。しかも、驚くほど速いスピードで伝わっています。
大陸経由で伝わった説もありますが、日本へは、ポルトガル船経由かと思われます。



【 トウガラシ類のいろいろ 】

世界の中でも、日本はとても多くの種類のトウガラシがあるそうです。気候や地理的な条件もあるのでしょう。
在来種が多く記載されている論文をご紹介しておきます。これでも、ごく一部かと思います。
トウガラシ在来品種を用いた研究動向と遺伝資源としての保全と利用/松島憲一氏
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030922384.pdf

【 在来甘長トウガラシの類 】

在来種と呼ばれる中に、辛くならないトウガラシが各地に残っています。
日光とうがらし(栃木)伏見甘、万願寺、田中(京都)、そら南蛮(長野小諸)、杉谷とうがらし(滋賀甲賀)、田中とうがらし(京都)、ひもとうがらし(奈良)、紫とうがらし(奈良)などです。


常々思うのですが、長野は、品種遺伝の長く残っている場所ですね。
種苗店もとても多い場所です。


現在の店頭では、昭和になって生まれたものや、F1品種、ベル型まで含めると多量にあります。



【 甘とうがらしが 辛くなる という事故について 】


実は、元々トウガラシ類は辛いもので、甘味種は後天的に生まれたようです。
コロンブスが西欧に持ち込んだ際に、黒コショウの仲間ではないかとして、植物名にpepperとついた経緯があります。つまり辛かったんですね。
胡椒と区別するため、チリペッパーや、レッドペッパー(英国)など、pepperという呼び名が今もそのまま定着しました。
一般に小さな果実ほど辛味があるとされますが、大型のベル品種に辛いものがあり、はっきりとした区別がありません。


甘味種は、長い年月をかけた分化の結果、甘い品種と辛い品種に分かれたのでしょう。
ちなみに、日本の江戸時代の記述では、辛味のあるものがトウガラシであるとしています。
甘味種が固定した時期はわかりませんが、江戸期に甘味種も存在していた可能性があります。


さて、本題です。

甘とうがらしが 辛くなる という事故について
シシトウや、伏見とうがらし、万願寺とうがらしなどの中に、本来は辛くないものが、ものすごく辛いときがあります。


原因とされるものは、
① リン酸の土壌中の施用量に影響を受ける。
② 急激な乾燥や高温などにより種子が少ない個体になる。
③ 辛味種と交雑した種子を植えた。
があります。


遺伝的に持っている、辛味成分「カプサイシノイド」を生産する能力が、環境変化をきっかけにして、スイッチが入ると考えればよさそうです。
辛味のでない品種育成は今後も重要なテーマということになります。


なお、「近くに鷹の爪など辛味種を植えると起きる(メタキセニア)」というのは俗説です。
すでに辛味種と交雑した種子を使っていた可能性が指摘されています。
詳しくは、日本のトウガラシ権威 信州大学農学部 松島憲一教授
「トウガラシ栽培における果実の辛味変動とその要因」
https://www.tokusanshubyo.or.jp/tokusan20_09.pdf

人工的につくった種なしシシトウは、辛くなるそうです。



【 万願寺とうがらしの誕生 】


伏見とうがらしと、ベル型のピーマン「カリフォルニアワンダー」が自然交雑したものが舞鶴万願寺から各地に広まったものというのが通説。
万願寺は、京都府の北部で日本海に面する、舞鶴市万願寺地区が発祥。
「万願寺」というお寺も存在します。
地名から名付けられたと考えるのが良さそうです。


大正時代には舞鶴周辺以外でも自家消費用として栽培が広まっていたようです。
その後、昭和58年にJAが「万願寺とうがらし」として販売を開始。
平成元年には特に優れた京都の伝統野菜として「京のブランド産品」に認証されます。


京都府のHPでは、「万願寺甘とう(万願寺とうがらし)」と、両方の呼び名を併記して紹介しています。

GI(地理的表示)登録では、「万願寺甘とう」で登録されています。
「万願寺とうがらし(在来種)又は「京都万願寺2号」を用いる」とあります。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/37.html


では、「京都万願寺2号」とは何でしょうか。
実は、先に1号が出ていました。



【 京都万願寺1号 と 京都万願寺2号 】


先述のとおり、シシトウの類は、環境などの影響で、辛いものが発現するケースがあります。
これではクレームの原因となります。


そこで、改良種として、2004年、辛味果実の発生の少ない改良種「京都万願寺1号」が生まれます。
農水データベースには、「鶴市在来の「万願寺とうがらし」を葯(やく)培養による再分化個体から選抜して育成された固定品種」となっています。
葯培養について簡単に説明します。
葯(やく)は花粉の詰まった袋です。これを培地で培養し、花粉から直接植物体を得る方法。カルス(細胞の塊)を形成したら、薬品を使い、冷やしたり温めたりして(?)半数体から2倍体をつくります。開発スピードが速く、固定種をつくることができる方法だそうです。
出来上がった「万願寺1号」は、辛味が少なく改良されたとはいえ、残念ながら、辛い果実がまったく発生しないという訳ではありませんでした。



そこで「京都万願寺2号」が生まれます。

2009年出願2011年品種登録。
ナント種苗のピーマン「とんがり」を種子親、万願寺1号を花粉親として人工交配。これに、京都万願寺 1 号の連続戻し交雑を5回おこなったもの。
辛味を支配しているC遺伝子座に連鎖するDNAマーカーを選抜し、遺伝的に辛味のカプサイシノイドを合成しない性質を持たせたと説明があります。
ピーマンの生食用品種では辛味果実が全く発生しない品種群があり,それらでは単一の劣性遺伝子がカプサイシノイド合成経路を遮断していると推察されている(Daskalov・Poulos, 1994; Deshpande, 1935; 南山,2002)とのことです。これを利用して、京都万願寺2号は誕生しています。


「京都万願寺1号」と比較して、果実の長さ、直径が大きくなっています。
品種登録者の名称及び住所は、1号2号ともに京都府 (602-8570 京都府京都市上京区下立売通新町西入藪ノ内町)となっています。



【 万願寺甘とう と 万願寺とうがらし まとめ 】


JAにのくに様に確認したところ、「万願寺甘とう」は現在、99%以上が「京都万願寺2号」に切り替わっているそうです。
JA系統で出荷された「万願寺甘とう」については、辛味果実が混入するケースは無さそうです。


「万願寺甘とう」は、地域団体商標登録されています。商標登録第5150710号
権利者 全国農業協同組合連合会(東京都千代田区大手町1丁目3番1号)
呼称を利用する際ご注意ください。
ちなみに、現在の万願寺甘とうは、「京都万願寺2号」か「在来万願寺」いずれか、としているそうです。



京都府が登録した昭和末期の時点では、伝統野菜としての歴史がありました。
しかし現在となっては、ほとんど改良種に切り替わっているので、伝統品種というよりは、未来を切り開く、次世代を担う存在といえます。


JA経由でない京都府産「万願寺甘とう」については、「在来万願寺」が混入するケースがあります。
なお、他府県の方が「京都万願寺2号」の苗を入手することは出来ません。

辛い万願寺とうがらしは、ロシアンルーレットのように、今も当たる可能性が残っています。

202307改


その他 参考
「辛味果実の発生しない甘トウガラシ新品種‘京都万願寺 2 号’の育成11_411」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/11/3/11_411/_pdf/-char/ja
舞鶴市HP
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/kankou/0000001139.html

関連ワード

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