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リンゴ シナノリップ
科:バラ科 Rosaceae
属:リンゴ属 Malus
種:セイヨウリンゴ M. pumila
【 歴史と 国内の来歴 】
リンゴ属の原生種は、欧州・アジア・北米に分布していますが、現在日本で栽培されているリンゴの基本種は欧州東南部およびアジア西部のものと考えられています。
長く中国大陸から入った「ワリンゴ」が栽培されましたが、もっぱら食用としてのものは、渡来品で、明治4年に北海道開拓使にさかのぼります。
次官であった黒田清隆が米国産の苗木75種を持ち帰ったのが最初とされます。
明治7年には内務省勧業寮が苗木を全国に配布し、国内での栽培がスタートします。
記録では、その後もフランスから約100品種(気候にあわず断念)、明治年間だけで約270品種。昭和に至るまでの間に500種以上が輸入されています。
どれほどの期待感があったのかが伺えます。
【 品種の保護について 】
多くの有名な品種は誕生年が古く、品種登録もされていません。
昨今問題になっている、苗木流出など、農家にとっての利害に深くかかわる事態には、何がしかの対策が必要かと思います。
近年のものについては、国(農研機構等)の努力で、品種の維持管理がなされています。
りんごは、変種の発見など、自然発生的な品種開発も多いことから、民間育種も旺盛です。
その分、種の管理の点では、ハードルが高くなってしまうのが現状。
【 シナノリップ の品種登録 】
農水品種登録DBを抜粋し引用します。以下
作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Malus Mill. (和名:リンゴ属)
登録品種の名称 シナノリップ (よみ:シナノリップ )
出願公表時の品種名称
登録年月日 2018/02/09
育成者権の存続期間 30年
品種登録者の名称及び住所 長野県 (380-8570 長野県長野市大字南長野字幅下692-2)
樹勢はやや弱、樹の型は分枝型、樹姿(分枝型品種に限る。)は開張、枝の太さは細、節間長は短、・・・果皮を被う色は紫紅、果皮を被う色の濃淡は中、果皮を被う色の型は不明瞭なしま模様を伴った全面着色、梗あ周辺のさびの量は中、果実側面のさびの量は無又は小、がくあ周辺のさびの量は無又は小、果点の数は中、果点の大きさは中、スカーフスキンの多少は中、果柄の長さは中、果柄の太さは太、梗あの深さは中、梗あの幅は中、がくあの深さは中、がくあの幅は中、果肉の硬さは中、果肉の色は帯黄、果実の甘味は中、果実の酸味は中、果実の蜜の多少は無又は極少、果心の形は円錐形、開花始期は早、収穫期は早である。 出願品種「シナノリップ」は、対照品種「シナノレッド」と比較して、つぼみの色が濃桃であること、幼果のアントシアニン着色の広がりが大であること、果皮の地色が黄であること等で区別性が認められる。対照品種「つがる」と比較して、果皮を被う色の面積が大であること、果実の酸味が中であること等で区別性が認められる。
早生品種で、2018年登録と、比較的新しい品種ということができます。
長野県果樹試験場で、「千秋」に「シナノレッド」を交配。
長野県のみでの栽培となっており、令和元年の長野県における栽培面積は89haとのことです。同年の長野県リンゴ栽培面積は、7500haとのことですから、約1%。早出しの早生が市場で好意的に受け止められると、産地の対応も変わると思います。
実食すると、なるほど近年の早生りんごは、みな高品質で、高品質で、好感度も高いと感心しています。
長野県としての、リンゴ品種は、積極的に育成されていて、高嶺、シナノスイート、シナノレッド、シナノゴールド、シナノドルチェ、シナノピッコロ、シナノプッチ、シナノホッペ、キルトピンクが農水省品種登録DBに登録されています。
近年、某県でひと房万円の値がつく葡萄の品種・商標などの登録がされていなくて、呆気にとられましたが、長野県はきちんと生産者を守ろうと努めています。
国際ルールでは、性善説などまったく価値を持たないことは知っておくべきです。
【 シナノリップを食べた印象 】
あまり大きくない、40玉サイズ位のりんご。
重量感はそれなりですが、とにかく外観が魅惑的。
色の具合もよく、とても好ましい第一印象です。
まずは、見た目がよくないと、だめですものね。
切る前から、香りが感じられ、視覚と嗅覚の点では良好な印象。
切ってみると、早生らしく、やや柔らかい印象。スカスカというわけではないので、その点では十分合格なのかなと思いました。堅いリンゴというわけではないと思いました。
実食すると、甘いだけでなく、酸味もしっかり感じられて、適度なジューシーさもあり、優秀な品質だなと思いました。
早生のリンゴは、けっこうガッカリする場面もあります。鮮度感さえあれば、期待通りの美味しさを楽しめるのかなと思います。
もうひとつ、記憶しておきたい事に、適度な渋味があります。皮周辺からくるものでしょうが、皮ごと食べると、「甘味」「酸味」「渋味」「香り」が順序を変えながら楽しませてくれます。
なかなかの趣向です。
とても優良な品種だなと思いました。今後、切り替えで生産量が増加しそうな印象です。