中出　りんご梨

通称が、「りんご梨」。
リンゴだか、梨だか　わからない名前で、混乱しますね。
「新星梨」も、外観がリンゴに似た形になるため、「リンゴ梨」とも呼ぶ人がいます。デリシャスに形が似ています。
いずれにせよ通称なので、混乱しやすいですが、みなさんの意見なので致し方ないです。
きちんと品種登録されていますので確認しておきたいです。

【　中出　（りんご梨）の品種登録　】
抜粋し転載します。

作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Pyrus pyrifolia (Burm. f.) Nakai var. culta (Mak.) Nakai　（和名：ニホンナシ変種）
登録品種の名称 中出　（よみ：ﾅｶﾃﾞ ）
登録年月日 1999/04/15
育成者権の存続期間 25年
品種登録者の名称及び住所
中出雅則 （638-0832 奈良県吉野郡大淀町薬水1145-1）
この品種は，「二十世紀」のほ場で発見された変異樹であり，果実の外観は円卵，果皮の色は黄緑，大きさがやや大，育成地（奈良県吉野郡大淀町）において９月中下旬に成熟する品種である。・・・果肉の色は黄白，硬さは軟，粗密及び切り口の褐変は中，甘味は高，酸味は弱，果汁の多少は多である。種子の形は卵，大きさは中，成熟期は中で育成地において９月中下旬，みつ症状の発生は無，貯蔵性はやや短である。「二十世紀」と比較して，果実が円卵形であること，有てい果があること等で区別性が認められる。

「中出」は、奈良県吉野郡の中出さん圃場で見つかった変異。
人名の苗字をそのままつけた名前です。品種登録にはよくある話です。
二十世紀の変種と考えてよさそうで、特徴は、外観の形状と有てい果があること、としています。

「有てい果」とは何か？を少し解説します。
梨の花が咲いて、受粉すると、子房の部分が果実になります。この際、花びらのついている萼（がく）は自然に落ちて無くなるのですが、それが残るという話です。
いわゆる「おしり」にある、この部分です。

王冠状の出っ張りが明瞭にあります。

普通は自然に無くなる、もしくは傷みやすいので奇形として摘果するか、切り落とすようですが、この品種の場合、特に何等かの問題にはならないようで、購入した個体すべてに同じような特徴が見られました。

この特徴って、リンゴに似ていますね。
リンゴと比較してみます。

比較対象は、お馴染み　「シナノスイート」と　「中出」

「おしり」部分が似ているということで、「りんご梨」と呼ばれるようになったと考えたほうが良さそうです。
ちなみに、「新星」にも似たような形質があります。
新星のおしり部分

中出ほど顕著ではないですが、「有てい果」が出やすいと考えて良さそうです。
りんごの香りがする！という評があります。
正直、そういわれてみると、そんな気がするという位で、似た香気はありますが、リンゴそのものとは言い難いです。
「あきづき」なども、「有てい果」が出ますので、特段の違いとまでは言えません。
しかし、「りんご梨」と呼ばれる理由は、その外観にあるのではないか、と想像します。

念のため、果点の美しい、紅あかりを例に、部位名称を図にして、どの部分の話なのかをおさらいします。

おしりの凹んだところは、もとはと言えば、花が咲いていたところです。
萼（がく）とその周辺が果実になっても、名残りが残っているという話です。
ちなみに、実際に食べている部分は「花托（かたく）」で、いわば茎が厚みをもった部分です。
「偽果（ぎか）」と呼ばれ、リンゴ、ナシ、ビワなどで同じような果肉形成をします。
イチゴも、実は偽果です。

このサイトでも、よく「おしりの部分」として、萼窪周辺を表現していますが、捉え方によっては、おしりではなく、先端で、頭であるとも言えます。

【　食べた感想　】
やや粗い肉質ですが、二十世紀に似た、ザクザクと心地よい食感です。
甘さは普通で、とても甘いというわけではないです。
香りは、ほんのり、りんごに似た感じもしますが、意識下にリンゴの事があるからかもしれません。
スッキリとした、二十世紀とはまた違ったような香りがあります。
外観上は、縦スジの入った個体が多いかもしれません。