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ラッカセイ 落花生 ピーナッツ なんきんまめ そこまめ からまめ じまめ
peanut
科:マメ科 Fabaceae
属:ラッカセイ属 Arachis
種:ラッカセイ A. hypogaea
マメ科の植物ですが、特異な性質を持っているラッカセイ。
どういうふうに実をつけるのか、知らない人も多いようです。
実は地中で実が育っているんですよ。
南京豆(なんきんまめ)」は、中国南京渡来ということで、そう呼ばれるようになったのでしょう。
「pea」はエンドウ豆やエンドウ豆などの「豆類」のことです。「nuts」は「木の実」を意味しています。
つまり、ピーナッツは「木の実(ナッツ)のような豆」ということになりますが、ナッツではありません。
【 起源 】
諸説ありましたが、南米ブラジルに自生するナンキンマメ属についての記録から、南米説が有力に。ボリビアあたりではないかと考えられています。
南米ペルーの遺跡から出た原始的な種は、中国南部に見られるそうですが、伝播は、やはりスペイン人が侵略して、のちに海路陸路で各地に伝播したと考えられています。
【 日本での栽培歴史 】
沖縄県ではかなり古くから栽培されてきたようです。
江戸時代宝永年間(1704~1711)に、中国から入ってきたのが本州に入った最初とされます。しかし、ほとんど普及することが無かったそうです。
神奈川では明治4年、横浜の渡辺慶次郎氏が、中国ルーツの種子を入手し試作しています。
これが実質的な普及のきっかけと思われます。
千葉県で、牧野万右衛門が、神奈川から種子を取り寄せ試作。
同じく千葉県で金谷惣蔵が鹿児島から取り寄せた種子で栽培を始めます。
のちに両氏は販路開拓に努め、現在に至るまで続く、千葉県ラッカセイの栽培の基礎が形作られます。
また、明治7年、政府がアメリカ産の大粒種の種子を輸入し、埼玉、三重、福島などで栽培を奨励。一般に広く栽培されるようになりました。
静岡県では、明治12年に試作が行われたようです。
こういった背景もあって、戦前は、千葉、神奈川、静岡、鹿児島が主な産地。
大正時代は、意外なことに輸出作物となっていますが、技術的な問題や、価格が不安定なため、一部は撤退し、養蚕などに切り替わっています。
昭和16年に戦時体制に入ると、八街市など一部を除き、落花生栽培は禁止されました。
戦後再び栽培面積は増加。
統計情報の誤差もあるようですが、戦後は収量回復の技術進歩に課題があって、経済作物として、あまり注力されてこなかったようです。
長い期間を経て、技術改良もすすんだようで、昭和38年にラッカセイの収穫量は最大となります(さや付き重量データ)。
現在は品種改良や、マルチ栽培によって、不安定だった栽培にも一定の成果が出ているようです。
ただ、数字を見るかぎり、関東一極集中(とくに千葉)ということは、現在も変わりありません。次項でご説明。
【 現在の産地状況と適地 】
現在の主産地は、関東に集中しています。
令和3年農水省作物統計では、栽培面積は千葉県で81%、茨城県で8%となっています。
栽培面積を元にした理由は、出荷量のデータの記載がないため。
南米原産とされる、ラッカセイは、本来、高温で日照の多い地域での栽培が向いている植物。
世界の栽培適地は、北緯45°~南緯30°と広いのですが、日本では、平均気温11°を境に北限となっているそうです。
生育と積算温度には強い相関があります。とくに、大粒種は、一定以上の積算温度が必要なようです。
土壌は水はけのよい場所が好ましいようです。
大産地の、千葉県八街市(やちまたし)は、春の強風で砂ぼこりがすごい!ので、「八埃」(やちぼこり)とも呼ばれています。火山灰土の関東ローム層で軽い土の地域です。
土壌や環境も優れていたと思われますが、先述の歴史的な背景もあり、結果的に栽培の9割が関東、とくに千葉県に集中したと考えられます。
【 代表的品種 】
分類としては、小粒な「スパニッシュ」「バレンシア」系と、大粒の「バージニア」系に大別されます。熊澤三郎らは4種に区分しましたが、現在は細分化して、この分類だけでは説明しにくくなっています。
国内で栽培される、とくに大産地 千葉県の品種を挙げます。
「千葉半立(ちばはんだち)」
関東のラッカセイ栽培面積の半分を占める品種。
粒ぞろいがよく、煎り豆や加工用で引きが強い人気種。
小粒ながら濃厚な味わいで、長い人気を誇ります。
「ナカテユタカ(中手豊)」
バージニアと小粒のスパニッシュの中間交雑。千葉半立より一回り大きめの早生品種。
千葉半立ほどの濃厚さはありませんが、カジュアルに楽しめる、炒り豆むきの品種。
殻の外観も良いのが特徴です。
「郷の香(サトノカ)」
千葉県の開発品種。品種登録もされています。早生で長いサヤ。粒が大きく、旨味のある品種です。
「ナカテユタカ」と「八系192号」を交配した固定種。育成権は切れています。
茹で豆でもっとも真価を発揮する品種。
「おおまさり」
こちらも千葉県の育成開発品種。とても大粒で通常品種の2倍ほどの大きさ。存在感があります。
現在は「おおまさりネオ」も出ています。長サヤで、こちらも大粒品種。
食味がよく、茹でて食べるのに適しています。
外観もよく、贈答やレトルト加工品でも人気です。
「Qナッツ」
「Pナッツ」を超える、という意味で、アルファベットの次にくる「Q」を名前にしています。
2018年に、20年以上の期間を経てリリースされた期待のラッカセイ。
品種名「千葉P114号」で、千葉県の育成。
殻の外観が白くて見栄えが良い、しっかり甘さを感じられる品種です。炒り豆むきの品種。
ちなみに
農水省の品種登録を検索すると、登録済10件のうち9件は千葉県によるものです。
ラッカセイは、適度な大きさのものが本来の味わい。大きすぎは味わいが損なわれるようです。また、外観の良いほうが好まれますが、味とは無関係で、むしろ綺麗すぎるものは、若採りの可能性もあって、これも味に影響するようです。
【 郷の香 の 品種登録内容 】
農水省品種登録データベースの内容を、引用一部抜粋
農林水産植物の種類 Arachis hypogaea L. (和名:ラッカセイ種)
登録品種の名称 郷の香 (よみ:サトノカ )
登録年月日 2000/03/30
育成者権の存続期間 20年
育成者権の消滅日 2020/03/31 ※期間満了
品種登録者の名称及び住所
千葉県 (260-8667 千葉県千葉市中央区市場町1番1号)
この品種は,「関東42号(後の「ナカテユタカ」)」に「八系192号」を交配して育成された固定品種であり,育成地(千葉県八街市)における成熟期は早,莢は長く,粒形は長形で多収の煎莢加工用及びゆで豆用品種である。・・・莢の長さは長,幅,厚さ及び莢の粒間のくびれは中,1莢内粒数は少である。粒形は長形,種皮の色は淡橙褐,粒重は大,品質はやや上である。開花期及び成熟期は早,着花習性は有,休眠性及び倒伏抵抗性は中,収量性は多,かたさは硬,甘味は多,うま味はうまい,粗脂肪含有率及び茎腐病抵抗性は中,さび病抵抗性は弱である。「タチマサリ」と比較して,分枝長が短いこと,粒形が長いこと,粒重が大きいこと,開花期が遅いこと等で,「ナカテユタカ」と比較して,葉色が緑であること,莢の粒間のくびれが浅いこと,着花習性(主茎着花)があること等で区別性が認められる。
雑味のない、おいしいラッカセイです。
今後切り替えが進みそうな印象です。