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吹立菜(ふきたちな) てんば菜 くきたち菜 唐菜 雪ノ下
アブラナ科アブラナ属
【由来】
万葉集では「九久多知(くくたち)」と歌に詠まれているものがあります。
「くきたち」「ふきたち」に似た音です。「九久多知」は、アブラナ科の若菜全般のことをさすようです。
少なくとも、ずいぶん古くから親しまれてきた野菜のようです。
分類上はアブラナ属カブナBrassica rapa L. var. rapa。
カブナの仲間には、日野菜、野沢菜、小松菜や水菜が含まれ実に多様です。カブ自体も、各地で大きく姿を変えて、今も一部が残っています。
小松菜の亜種とされ、よく似ていますが、この個体では、葉の縁に、細かなギザギザがあります。
【各地の呼び名】
昭和初期頃までは全国各地で盛んに栽培されていたようで、それぞれの地域で様々な呼び名で呼ばれます。
「くきたち菜」・・・万葉集「九久多知」と歌に詠まれたのが語源か。
「ふきたち菜」・・・春になると一斉に花軸が吹きあがるように出てくるので。
「てんば菜」・・・塩漬けにした重石の下からでもニョキニョキと茎を伸ばす様子が、おてんば娘に見えることから。
吹立菜と呼ばれるものは、石川県内で広く栽培されています。
くきたち菜、茎立菜と呼ばれるものは、東北会津などにみられます。葉に切り込みが入ります。
会津の伝統野菜「荒久田(あらくだ)茎立」は昭和になる以前から栽培されていたようです。
チリチリとしたちりめん状になった、「ちりめんくきたち」もあります。葉に細かな切れ込みが入るタイプで、セイヨウアブラナの選抜。寒い環境でちりめん状になるのでしょうか。
名前や外観に違いがあっても、アブラナ科の葉野菜は、多様に変化ながら、各所で生き残っていきます。
「吹立菜」「くきたち菜」とも呼ばれます。
【 栽培されなくなった理由 】
自家消費用の栽培としてのみ残ったのではないかと推察します。
19世紀以降、多様な野菜が日本に流入しました。キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、白菜。レタスやアスパラ、玉ねぎ、じゃがいもも、案外遅く、明治維新以後に入ってきた野菜です。戦後の経済成長後、急激に食生活が変化した結果、洋食に向く多様な商業作物を栽培する必要が生まれたのでしょう。
アジア大陸中心だった交易が、16世紀ごろから、南蛮貿易で西欧ほかの新しい品種が大量に流入し、定着してきました。一部は環境に対応し変異した一方で、各地に残っていた大量の在来種も姿を消していきました。
商業作物中心の時代の荒波の中、各地で細々と栽培されたものを、自家採種して、現在も親しまれる自家消費用野菜として残ったものと思われます。
量販店での流通はなく、直売所などで見つけることができます。
【タネの入手】
種は通販等で入手できると思います。
「くきたち菜」「ちりめん茎立ち」
「吹立菜」は笠舞系とよばれるもの。江戸期に金沢市笠舞地区で栽培が始まっています。
「てんば菜」「唐菜」の名で種は見つかりませんでした。
「荒久田(あらくだ)茎立」は会津若松・菊池種苗店で「早生茎立ち」の名で入手できるようです。
202203時点
202301改
202410改