陽光　　ようこう

中生種で10月中旬ごろ収穫を迎える中生種の赤リンゴ。
10月中旬ごろから出回ります。
バランスはとても良いのですが、際立った特徴が見つけにくいという所が個性です。
欠けている部分というよりも、訴えるものが足りない印象。
でも、やっぱりおいしいです。要はバランスがいいリンゴ。
群馬県の育成。
商品化というものは、つくづく難しいものだと思います。
何かが特に優れているという個体を見つけ出す努力は、今後も続くのでしょう。

黄色いサビがつきやすいようです。写真は長野産のもの。石川県産のものも入手しましたが、妙に薄い色で、着色不良でした。
栽培適地なのか、群馬・福島・長野・山形・岩手が大産地。
中生種で貯蔵性は良いようですが、量的には少なく、年内の流通です。

【　品種登録情報　】

農水省に品種登録されています。抜粋転載。

作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Malus Mill.　（和名：リンゴ属）
登録品種の名称 陽光　（よみ：ﾖｳｺｳ ）
登録年月日 1981/05/27
育成者権の存続期間 18年
育成者権の消滅日 1999/05/28 ※期間満了
品種登録者の名称及び住所　群馬県 （371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号）
・・・この品種は、「ゴールデンデリシャス」の自然交雑実生から育成したもので、育成地で１０月２０～２５日頃成熟する赤色の着色系品種である。・・・果形は長円で、大きさは３００～３５０ｇ。果皮の地色は明黄色、着色は初期果面に縞模様が現われ、次第に果面全体が鮮紅色となり、着色が進むと光沢のある濃紅色となり縞が目立たなくなる。・・・果肉の色は白色で果肉はやや硬く、肉質はやや粗で酸味は中、甘味多、果実の日持ちは良好である。無袋栽培ではがくあ部を中心にさびが発生し易い。・・・果形は長円、王冠の発達は弱、がくあ、こうあの、深さはともに深、広さは中、果実の大きさは大、果皮の地色は黄、着色は濃く、縞は明瞭であるが、熟度の進行とともに不明瞭となる。着色の量は多、さびの発生位置はがくあで発生量は多、着色の早晩は中、皮目の形は扁円、さび状果点はあり、果点密度は中、果皮のろう質は中、光沢は強、果心の大きさ小、果肉の色は白、果肉のきめは中、甘味高、酸味中、波味無く香気は中、果汁は多い。・・・

育種自体は、昭和37年（1962）から始まっています。登録まで19年の歳月がかかっています。
歴史ある古参品種。

【　群馬県が品種登録するリンゴ　】

農水省に品種登録のある、群馬県作出のりんご。
（内は申請年度）

陽光（1979）　　新世界（1986）　ぐんま名月（1989）　スリムレッド（1992）　ハニークイーン（1993）　おぜの紅（2007）　紅鶴（2014）
「おぜの紅」　は、県と農研機構によるものです。

関東圏最大のリンゴ産地、群馬県。
おもに中山間地で栽培され、沼田市周辺が大産地になっています。栃木に隣接し、新潟に近い場所です。
日照時間が長いこと、昼夜の寒暖差が大きいことが適地とされたのでしょう。元は、養蚕農家が多かったようですが、転換し、観光リンゴ園として発展した経緯があります。
人口の多い首都圏が近いことから、もぎとり観光や、直売が盛んです。
観光リンゴ園としての運営が主力で、市場への出荷は少ない特徴があります。

【　じっさいに食べてみた　】

以前に石川産のものを食べましたが、いまひとつ納得いかず、その後長野産の個体を入手。
石川県産のものの印象は、多汁で大型ですが、いまひとつ色づきが良くなかったです。

長野産のものは32玉くらいの大柄なもの。「りんごの里」で入手。
縦縞がありますが、不明瞭で、薄い色合いのところで確認できます。
ロウは少なめ。香りも切る前ではあまり感じられません。
皮の厚みもあまり感じられず、実は堅めですが、良い食感で、ＣＭのリンゴみたいに見事な音がします。
最初に甘さを感じ、そのあと酸味。ふたつが交互に訪れたあと、香りがやってきます。
とても良い印象ですが、煮え切らない感じ。なかなか贅沢な悩みです。
特に、噛んだ食感は、「ザ・リンゴ」という感じで、好感が持てます。

皮付近に強い個性を感じました。
まったりした香りが強い印象です。

ジューシーさはありますが、とりたてて多汁という感じではありません。
甘さはきちんと感じられますが、濃厚ではなく、全てにおいてバランスが良くて優等生。食感も良い。大柄で見た目も良い。
しかし、他と比べると、何か物足りない。

そこが弱点のように感じられました。
たぶん、食べた人は、何か物足りない「何か」を感じるのではないかと思いました。
感性の問題とも言えます。

振り幅のない優等生は、どこか物足りないものです。
でも、美味しかったです。