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新甘泉 しんかんせん
お盆過ぎくらいから9月上旬までお目見えする、鳥取県生まれの和梨。
鳥取県は、「二十世紀」をはじめ、「八雲」、「なつひめ」など、青梨栽培が盛んな特異な県です。
また、県を挙げてオリジナル梨品種に取り組んでいます。
この品種の開発意図は、袋掛けなど、作業に手がかかる二十世紀に偏っていること、高齢化による作業負担の軽減でき、高糖度の品種を育成することを目的としたそうです。
鳥取県園芸試験場で育成され、2008年に品種登録に至っています。
「新甘泉(2008年登録)」は、母「筑水」花粉親「おさ二十世紀」ですから、「なつひめ(2007登録)」とは姉妹になります。
両者の違いは、「なつひめ」は8月に旬を迎える早生品種。やや遅れて「新甘泉」が旬を迎えます。どちらも1898年に交雑したとありますので、選抜される中で分けられたのでしょう。
名前の由来は、JA全農とっとりでは、「あたらしい甘さあふれる泉のような」梨としています。
一般社団法人鳥取市観光コンベンション協会のHPでは、「甘さ超特急!鳥取オリジナル品種の梨」と紹介しています。
コピーに勢いがありますね。
新幹線が早く通って欲しい!という願望も込められているようです。
なお、似た名前の「秋甘泉(あきかんせん)」も、鳥取県の育成した赤梨で、9月中旬ごろ出回ります。
「なつひめ」「新甘泉」「秋甘泉」新品種についての報告
参考に御目通しください。
鳥取県農林総合研究所 園芸試験場報告 H26年2月
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/903702/engeishikenjo_houkoku_1gou.pdf
交配して得られた20,000粒の種から選抜するという、気の遠くなる長い作業の結果生まれています。
これは、心して食べなくては。
【 品種登録情報 】
農水省に品種登録されています。抜粋し転載。
作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Pyrus L. (和名:ナシ属)
登録品種の名称 新甘泉 (よみ:シンカンセン )
登録年月日 2008/02/22
育成者権の存続期間 30年
品種登録者の名称及び住所 鳥取県 (680-8570 鳥取県鳥取市東町一丁目220番地)
この品種は、「筑水」に「おさ二十世紀」を交配して育成されたものであり、果実の形が円、果実の大きさが大、果皮の色が黄赤褐の育成地(鳥取県東伯郡北栄町)では8月下旬に成熟するやや早生種である。・・・果実の大きさは大、果皮の色は黄赤褐、果点の大きさは中、密度は密、果面の粗滑は粗、果梗の長さは中、太さは細、肉梗の有無は無、果芯の形は短紡錘、大きさは中、果肉の色は白、硬度は中、粗密は密、甘味はかなり高、酸味は中、果汁の多少は多、種子の大きさは中、形は卵である。開花始めはやや晩、成熟期はやや早で育成地においては8月下旬、裂果は無である。「豊水」と比較して、梗あが深いこと、ていあが広いこと等で区別性が認められる。
【 じっさいに食べてみた 】
中くらいの大きさの個体。当然ながら鳥取県産です。
皮の色が、幸水や豊水とは違って、均一でやや薄いカーキ色。くすんだ赤味のある黄色です。
果実の大きさなりの重量感が感じられます。
皮は薄く繊細な感じで、皮むきしやすいです。
果肉は白。軸に空洞ができやすい品種とされています。
水分たっぷりで、甘さはじゅうぶん感じられました。
芯の近くであっても、酸味などはありません。
和梨特有の「石細胞」は、あまり感じられず、キメの細かな果肉です。
適度なシャリ感が楽しい。
青梨に近いシャリ感のある果肉で、甘さもじゅうぶん。
赤梨に青梨を交配ということで、いいとこどりになっています。
また、果肉もすこし柔らかい印象です。
香りはとくに感じられません。
甘くて泉のように湧くジューシーさ、繊細で新味のある味わい。
なるほど と膝を打つのでした。
うまく名前をつけるものです。
1時間ほど軽く冷やしてお召し上がりください。
202309