輝太郎　　きたろう　

完全甘柿。

本来は、鳥取県の、オリジナル柿品種として誕生したはず　だった、甘柿です。
悲運のうちに、県オリジナル品種で無くなった経緯も含め、ご説明します。
あまり例のない事かも知れません。

早生とは思えない、甘さの際立つ、良好な柿です。
何より、食感がたまらなく良かったのが印象に残りました。

名前の由来は、漫画家「水木しげる」氏が、少年期を鳥取県境港で過ごした縁から、代表作「ゲゲゲの鬼太郎」にあやかったものと思われます。

りんご品種に「きたろう」があります。
こちらは、黄色いりんごであることにちなんでいます。

【　品種登録情報　】

農水省に品種登録されています。抜粋して転載。

作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Diospyros L.　（和名：カキノキ属）
登録品種の名称 輝太郎　（よみ：ｷﾀﾛｳ ）
登録年月日 2010/03/11
育成者権の存続期間 30年
品種登録者の名称及び住所
鳥取県 （680-8570 鳥取県鳥取市東町1丁目）
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 （305-8517 茨城県つくば市観音台）
・・・果実の大きさは大、果実の縦断面の形は扁円形、果実の横断面の形は円形、・・・成熟期はかなり早、果実の渋味は常に無である。　出願品種「輝太郎」は、対照品種「早秋」と比較して、果実の縦断面の形が扁円形であること、へたの果実に対する大きさが小であること等で区別性が認められる。 対照品種「宗田早生」と比較して、果実の縦断面の形が扁円形であること、へたの果実に対する大きさが小であること、成熟期がかなり早であること等で区別性が認められる。

冒頭で説明した、この柿が、「鳥取オリジナル品種」では無くなってしまった件について、述べておきます。

元はと言えば、鳥取県園芸試験場が、「宗田（そうだ）早生」と、国立研究開発法人　農研機構　が育成した「安芸津（あきつ）１４号」の２種類の柿を交配して育成し、平成２２年に品種登録にこぎつけています。

交配が行われた１１年当時、安芸津１４号は地域別の栽培特性などを調べる試験中で、農研機構は育種などでの使用を禁じていたようです。

2016（平成28）年になって、農研機構が、鳥取県の出した論文から、試験期間中であった「安芸津（あきつ）１４号」を使った品種である事に気づきます。

話し合いの結果、「輝太郎」の権利については、保有する鳥取県と農研機構の共同保有に変更することで合意したとのことです。

つまり、鳥取県側の育種権は独自のものでは無くなってしまったのです。

結果として、現在「輝太郎」の苗木は、複数の苗木業者が全国に向けて販売する状況になっています。
こんな事例もあるのだな、と思うばかりです。
小さなミスが、品種の運命を変えてしまいました。

鳥取県議会　農林水産商工常任委員会議事録
平成30年3月20日会議録 が閲覧できます。
「輝太郎」の鳥取県外での栽培解禁について　という議題で、県の担当課長が説明を加えています。
どうぞ　ご参考に。

【　じっさいに食べてみた　】

鳥取県産ではない個体を入手しました。
経緯については先述のとおりです。

しっかりとした、堅さのある個体。
色づきも良く、外皮もきれいで、水平に切ると、断面はほぼ円形です。
揃いが良いことは、商業生産としても優位ですね。

この個体は、種が３～４個出てきました。

水分は少ない印象です。
堅めの食感で、長い間モグモグと噛む楽しみがありました。

カリッとした食感。
食べ応えもあります。
存在感のある果肉。
甘さもじゅうぶん感じられ、柿好きには絶妙な立ち位置にいます。

何より、かじった時の音の良さといったら・・・。
何かのCMのようで、実に楽しかったです。