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晩白柚 ばんぺいゆ
カテゴリ:くだもの
ファイル名:banpeiyu20211011.jpg
晩白柚 ばんぺいゆ
科:ミカン科 Rutaceae
属:ミカン属 Citrus
ザボンの仲間になります。
【 来歴と日本での普及 】
原産地は、マレー半島とされています。
江戸期に、当時の百科事典「大和本草」にザボンの記述があります。ザンボやザンボウ、唐九年母とか呼ばれたようです。
明治期にいたるまで、日本のカンキツの主は、「紀州ミカン」でした。
そんな中、1920年、農業技手・農学者で熊本県八代出身の島田弥市氏が、ベトナムの船の上で食べた柑橘が美味だったので、サイゴンの植物園から株を分けてもらい、地元に持ち帰って栽培しますが、広まるには時間を要したようです。島田氏は、ほかにも、ポンカン・生姜を広めた功績があります。
1930年、台湾から鹿児島県果樹試験場に「白柚」の株が持ち込まれ、八代で栽培。急速に一般家庭でも栽培され、のちに改良されて、在来よりも瑞々しい果実となったことから、この改良種が広まります。
「晩生」の「白柚(ペイユ)」なので、バンペイユと名付けられます。
切っ掛けがなくては、こうはいかないですね。
最初に栽培に取り組んだ、八代市は、現在でも国内最大の生産地。
熊本県で全体生産量の96%が栽培されています。ほか、鹿児島、大分。
改良を重ね続け、昭和52年以降、ハウスによる促成栽培に成功し、八代市という狭い地域で、特化した進化を見せます。
現在では、八代だけでなく、熊本県広域で、栽培が取り組まれているようです。
【 食べた印象 】
とても大柄な果実です。バレーボール程の大きさの個体。
追熟が必要とされる果実で、市場流通のものを、指定どおり(入荷時点では10日後)を切ってみます。
切る前から、かなり良い香り。
切り方については、頭をかなり深く落とすと、解体しやすくなります。
実際に、手で割ってみると、アルベドと呼ばれる白い部分が分厚く、これで食べる所があるのかな?と思いますが、実際に食べると、結構な果肉量で、満足度が高いです。
何しろバレーボールに近いものが、半分食べられなくても、ソフトボール並に大きな果肉です。
香りのやさしさが、第一に印象に残りました。嫌みのない種類のものです。
この手の柑橘は、酸っぱいだけかなと思うでしょうが、意外なほど繊細な甘さとバランスをもっていて、なるほど島田弥市氏ではないですが、なかなかに深い味わいを持つ果実です。
大柄に似合わない、繊細さが印象に残ります。
食後に、大量の皮とアルベドが残ります。
砂糖漬けや、天日干しして、お風呂に入れるなど簡単なひと手間で、二度も三度も満喫できる柑橘。
香りがよくて、甘ければいいってもんじゃない。
平板な味覚表現が多い中、食品の持っている何か深さのようなものを、総合的に示してくれるような、そんな果実だなと思いました。
しかも、とても大きな、存在感のある柑橘なのになと、食後に、色々と考えさせられる体験になります。
202110
202211改