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南津海 なつみ
かなり遅い時期の、4~5月ごろ出回る柑橘。
初夏の頃に美味しくなることから、この名がつけられたようです。
酸味が強すぎる として、元は失敗作と思われていたのですが、そのまま樹に成らせていた実が、春になってカラスが食べたのを見て、「春まで木成り完熟させれば美味しい」と気づいたそうです。
米国生まれの「カラマンダリン」と「吉浦ポンカン」を交配した品種。
見た目は、やや大きめの温州ミカンにそっくりですが、ミカンではありません。
味わいも違います。
【 由来と 種のない品種 】
瀬戸内海に浮かぶ島、山口県大島郡周防大島町に「山本柑橘園」があります。
オーナーで、「南津海」の育成者 山本弘三氏は、多くの品種を育成しているようです。
品種登録には興味がないようで、検索しても出てきません。
「南津海」は、珠心胚実生だそうです。
単胚性であれば、花粉親との受精の結果は、一定です。
「南津海」の種子親は、多胚性。胚が一個ではないです。
結果として、親のクローンができるわけですが、たまに変異したのが出て来るそうです。
この、変化したものを育成したのが「珠心胚実生」。
ほかに興津早生、愛媛中生、ひめのかなどが「珠心胚実生」で生まれています。
愛媛は、山本氏の住む周防大島に緯度が近いので似た気候からか、愛媛でもさかんに栽培されています。
「南津海」には、通常タネが7個前後入るようです。
シードレス(種なし)もありますが、購入品にはその旨が書いてないものがあります。
【 種なし が品種登録されている 】
種なしの「南津海シードレス」が、品種登録されています。
シード(seed)がレス(less)なので、種なし。
農水省品種登録データベースより抜粋転載
作物区分 果樹
農林水産植物の種類 Citrus L. (和名:カンキツ属)
登録品種の名称 南津海シードレス (よみ:ナツミシードレス )
登録年月日 2013/09/26
育成者権の存続期間 30年
品種登録者の名称及び住所 山口県 (753-0215 山口県山口市滝町1番1号)
(育成者の登録に山本弘三氏の名は有りません)
・・・果実の重さは中、果皮の色は濃橙、油胞の大きさは中、油胞の密度は中、油胞の凹凸は凸、果面の粗滑はやや滑、果皮の厚さは中、果皮歩合は中、剥皮の難易は易、じょうのう膜の硬さは軟、さじょうの形は中、さじょうの大きさは小、さじょう(果肉)の色は濃橙、果汁の多少は多、甘味は高、酸味は中、香気の多少は少、種子数は無、発芽期は中、開花期は中、成熟期は晩、隔年結果性は中、浮皮果の発生は中、裂果の発生は無、貯蔵性は中である。 出願品種「南津海シードレス」は、対照品種「南津海」と比較して、種子数が無であること等で区別性が認められる。
山口県農林総合技術センターで、親品種「南津海」の穂木に、軟X線を照射したものを高接して結実させ、無核の系統を選抜したそうです。
【 他の柑橘との違い 栄養素 】
栄養素を柑橘ではあまり重要視しないところがあります。
ビタミンたっぷりなんでしょ?という位の知見。
南津海は、なぜか、特定の機能性成分を含んでいます。
突出しているのは、「カロテノイド」「フラノボイド」「シネフリン」
他の品種をぶっちぎって、多く含んでいます。
カンキツ類の機能性に関する知見と育種について/和歌山県果樹試験場 研究員 岩倉拓哉氏
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/002/seikahappyou_d/fil/r1-01.pdf
【 じっさいに食べてみた 】
皮むきは容易で、みかんのように皮むきできます。
アルベド(白い部分)の層も薄く、ペロリと剥けていきます。
頭からむいても、おしりから剥いてみても、同じように剥きやすいです。
じょうのう膜も薄いので、種無しであれば、特に気にする要素はありません。
パッケージには何も書いてないものでも、種無しでした。
種が出てきたものは、オリジナルの、「南津海」ということができます。
5月になって入手したものでも、甘味は多く、酸味もたっぷり感じられ、かつ、オレンジのような強い甘味と濃厚さがあって、やはり美味しい。
酸味が強いというコメントも見かけます。
適期まで酸抜きしなかった個体が流通しているかもしれません。
種の入ったオリジナルの個体に、まだ出会っていません。
私の食べたものは、改良種にあたる「南津海シードレス」ばかりです。
味わいには大きな差が無いそうです。
ちょっと疑問があるとすれば、種無しは、販売場のアドバンス。
どうしてきちんと表記しないのか、わからない。