レンコンについて 考える
レンコン 蓮根 蓮の根
科:ハス科 Nelumbonaceae
属:ハス属 Nelumbo
種:ハス N. nucifera
lotus root
lotusはハスをさします。lotus root=「ハスの根(根茎)」の話です。
【 レンコンの歴史 】
インドかエジプトが原産ではないかと考えられます。中国説もあります。つまり定かではありません。
仏教伝来以前から日本に自生していて、かなり古くから存在が知られています。
古くからある植物(野菜)のほうが、記録が無く、原産地論争は続きます。
レンコンの根茎部分は、元々は小さなものだったようで、今ある太った「レンコン」は改良の結果です。中国で食用として普及したのは確実なようです。
簡単に図解します。
食用として現在栽培されているものは、明治以前の在来種、明治期に導入された中国種と、その後交配や選抜されたもの に分けることができます。
系統選抜されたものには「備中」「支那白花」「ロータス」「オオジロ」等があります。
交配育種されたものには、「金澄(かなすみ)」系の改良種、「霞寿」「さが白祥」がありますが、既につくられていない品種もあります。
山口県岩国市の「岩国系レンコン」は「支那白花」が元。岩国では現在単一品種が栽培されているわけではありません。石川県加賀ノレンコンは「支那白花」が主。
「ロータス」も広く栽培されているようです。
「金澄」は千葉県の金坂孝澄氏が育成した品種で、現在も関東レンコンの主力品種です。中国種と、明治以前からあった「天王種」を交配したもの。とくに「金澄20号」は全国で広く栽培されます。
「金澄」は、生産量も多い重要な品種群。
そのほか、個人育種に取り組む人もいるようです。
しかし、販売時点では、品種を明示することなく売られています。
栽培農家の方にとっては、水堀りか、手掘りなど、品種選びは重要です。
食品を扱う販売者は、主力は中国系の選抜や改良種が主なのだなと記憶しておきましょう。
ハス品種全体でみると、観賞用のほうが圧倒的に多いようです。
日本では、2000年以上前の縄文時代の遺跡から発見された、ハスの種から復活した古代ハス「大賀はす」が知られています。
千葉県「大賀ハスまつり」は花の咲く6月に行われ、イベントとして、ハスの葉に飲み物を入れて茎をストローにして飲む「象鼻杯(ぞうびはい)」体験ができます。後述。
【 国内でのレンコン生産 】
レンコンは、高温で日照の多い場所を好みます。多量の水が必要なので、河や湖の近く、地下水の豊富なところなど、栽培適地は自然と狭まります。
大産地は茨城県。約4割を占めます。
霞ヶ浦の周囲、とくに土浦市、かすみがうら市で盛んです。
令和2年農水省レンコン出荷データから表と地図を制作。
各県の、栽培主力品種です。
茨城 「金澄(かなすみ)」 1号14号20号34号・・・など、改良種も多いです。
徳島 「備中」
佐賀 「金澄」「清秀」
愛知 「ロータス」「備中」
山口 「支那白花」
国内のレンコンの生産量は、ここしばらく5万トン前後で推移しています。
大きな変動がないことから、生活に身近な野菜として、一定の市場性があることがわかります。
【 レンコンのふしぎな生態 】
節間の長いものと、短いもの、その中間のものがあります。
「長茎種」は晩生が多く、「短茎種」は早生であることが多いそうです。
古い品種ほど節間が長く、新しい品種は短い傾向があるようです。
レンコン畑は、こんな感じです。
どんな風になっているのか、水中の様子を図にしてみます。レンコンは実写で品種は支那白花。
節の間から、葉柄や花をつける部分や根が伸びています。
レンコンの穴は空気の通り道だとは良く知られていますが、じつは、葉っぱにつながる葉柄部分にも、目視でわかるくらいの空気穴がいくつもあいています(拡大部分)。
「大賀ハスまつり」で、葉っぱに入れた飲み物を、葉柄をストローにして飲み物を飲める話をしましたが、葉の真ん中の白っぽいところに穴を開けると、葉柄の穴とつながってストローのようになります。
なるほど、天然のストローみたいですね。
枝分かれの部分がありますが、さらに枝分かれして、縦横無尽に増殖する性質を持っています。
こんな感じです。
枝分かれは、上の図では「子」にあたりますが、成長すると、「子」から「孫」も育ちます。
こんな感じです。
元々あった、種レンコンが、縦横無尽に成長して広がっていますね。
文字通り、足の踏み場がなくなるような感じだそうです。
じつに不思議で魅力的な植物です。
右側(つまり芽の部分)から、第一節、第二節・・・と数えます。
実際に出荷されているのは、第四節までで、五節以降は、筋が多く市場に出さないです。
第一節が柔らかいそうですが、店頭では、区別して売られていないので、見た目で判断するしかないですね。
【 収穫について 】
生態が特殊なので、収穫方法も、独特です。
収穫シーズンになると、テレビで見た人も多いだろうと思います。
おおまかに2つの方法があります。
① 水を抜いた畑から、クワなどで慎重に掘り出す(手掘り)。
② 地下水を噴射して、泥を落としながら掘り出す(水掘り)。
があります
①の手掘りの動画 愛知・田島蓮園の収穫風景
バックホーを見事な精度で操作しています。折れないように、掘り出すための「クワ」も特別なものです。
② の方法ならば、泥を落としながらレンコンを傷つけずに掘り出せ、労力も少ないことから、多くはこの方法で掘られていると思います。テレビでもよく紹介されています。
水掘り動画で、作業全体と、レンコンの生態もよくわかる秀逸な動画。
「私のとれたて日本一!(18)レンコン作りはいつも水の中
土浦市での栽培 SCIENCE CHANNEL
約30分ほどの長めの動画ですが、掘る作業だけでなく、どうやって成長しているか、種レンコンの植え方、その後の増殖や成長、鳥類の食害、茎の空気穴に至るまで、これを見ればレンコンの事が理解できる、すごい動画ですので、是非ご覧ください。
実は、植えっぱなしではなく沢山の作業があることもわかります。
タイトルの「いつも水の中」は、鈴木さん自身のことだったんですね。
とれたてレンコン、拝ませていただきます。
【 対策:鳥害や変色防止について 】
他の植物同様、細菌性の病気やセンチュウ被害、アブラムシなどの害虫被害がありますが、ハスならではの被害というのがあるので、紹介しておきます。
鴨など水鳥による食害です。
秋から春にかけて飛来して、レンコンが食害を受けるというものです。
特に、植えた直後に食害に会うと、被害は大きくなります。
被害を防ごうと、防鳥ネットを張るほか、色んな取り組みを試みられています。
朝日新聞デジタル
レンコン田のカモ対策に水上ドローン開発
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20170908001140.html
時々、茶色い外皮のレンコンを見かけると思います。
「赤シブ」と呼ばれるもの。酸化鉄の影響で、品質には問題ないものの、市場評価が下がります。
これを防止するために、収穫前の、葉柄が枯れていないうちに、葉柄を刈り取って、レンコンへの酸素供給を遮断する作業があります。「カラ倒し」と呼ばれる作業。
さまざまな作業を経て、収穫にたどりつくレンコン栽培。農家さんにしかわからない苦労があるものです。
【 レンコンの穴 について 】
レンコンには穴があいています。
空気(酸素)の通り道とされています。あまり知られていませんが、葉につながる茎にも穴があって、地上から空気を取り入れています。
穴の数は、真ん中に1~2個、その周りに7~9個と一定ではありません。
8個とか10個と断言しているサイトもありますが、品種による違いもあって、おおむね9~10個の穴があります。
ガス交換をおこなうため、「根」「葉柄」「葉」「レンコンの穴」は複雑に入り組んでいます。
節ごとに、多くのひげ根(根毛)も見られ、葉につながる葉柄も、この節の部分に集中しています。
興味深い形をしています。
【 風俗・風習とレンコン 】
お正月の、おせちの定番素材でもある、レンコン。
穴が開いているので、「将来の見通しがよくなる」という縁起をかついでいます。
冬至には、「ん」がつくものが運気が上昇して縁起が良いとされ、「なんきん」「にんじん」「ぎんなん」「きんかん」のほか、「れんこん」も縁起かつぎに登場します。
「運盛り(うんもり)」と呼ばれる、江戸時代に始まった洒落(しゃれ)に近い風習ですが、理屈で考えるよりも、遊び心優先。とにかく楽しみたいものです。
れんこんの葉っぱは、お盆のお供えに使う地域もあります。
飾り切りの「花れんこん」。
成型しやすく、華やかな気分になりますね。
【 レンコンの栄養素 】
似た感じの野菜(生)と、栄養素比較を表にしてみました。
レンコンは、栄養たっぷりの野菜だとわかります。特に、栄養の多そうなキクイモと比較しても、遜色ありません。カリウム、カルシウム、ビタミンCも意外に豊富。
食物繊維が多いとされますが、生の状態では、大きな差がみられませんでした。
じっくり取り組んでいたら、どんどん時間が経って、今年も最終日になりました・・・
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